ワタミは13日決算会見を行った。行動制限によって大きく影響を受けていた今年3月までの数字であり赤字の着地となった。しかし、減損要因を除くと、ほぼトントンまでこぎつけた。今期は何としても黒字化を達成する。

最も強調したい「焼肉の和民」は、大型連休(5月1日~8日)昨年比、211・5%と2倍の客数増となった。居酒屋から焼肉店への転換、そして先月発表した、全品390円以下の値下げは、社運をかけた大勝負だったが、まずは勝負に勝てた格好だ。

一番人気の「ワタミカルビ」は、味、量、価格で、お客さま満足度96・7%というアンケート結果が出た。行動制限を受けていた期間「焼肉の和民」の従業員は、職人に教わりひたすら肉の切り方を練習していた。現在では、ハラミをすべて店で「手切り」しており、肉の厚さや食感が違う。隠れた努力があってこそ、お客さまの満足につながる。

その他では「ワタミの宅食」の利益の伸びが大きい。新規にはじめたテレビショッピングが好調で年間2万食を獲得した。化学調味料を使用しない冷凍総菜「ナチュラルデリ」や、働く女性をターゲットにした親子向けミールキット「パクモグ」など、常にお客さまが「何を望んでいるか」に目線に合わせている。

競争激化が続く「から揚げの天才」は、コンテナ、キッチンカーなど低投資で出店できる戦略に切り替えた。さらに、のり弁やチキン南蛮弁当などを投入し、から揚げ店から、お弁当店に位置付けを変えたところ来店頻度が増え、客数が25%あがった。

主力の居酒屋も、ゴールデンウイークは、コロナ前の売り上げを回復する店も出てきた。専門店型の新総合居酒屋「こだわりのれん街」はグループ居酒屋と比べ1・5倍、すし事業も、転換前の居酒屋店舗の1・8倍の売り上げで実績を残した。

しかし、コロナが小康状態にある中、消費の腰は弱い。一部の自治体では人数制限も続いているが、補償なき営業制限はあり得ない。制限は、消費者への心理的効果が大きい。人数制限をするなら、しっかりと機会損失を自治体は補償すべきだ。

協力金もなくなり、マーケットは縮小し、今後の飲食業界は生き残り合戦が進む。そうした中で、ワタミはすし事業の責任者を社内公募した。新入社員でも構わないと、対象を全社員とした。即座に15人が決意文とともに名乗りを上げた。なかには宅食部門の女性営業所長や、降格覚悟で応募した管理職もいた。戦いに手をあげる社員がこれだけいることを頼もしく思う。

長期的には円安を意識して、薩摩牛の焼肉食べ放題「かみむら牧場」の海外進出を急ぐ。台湾や香港の店舗が好調で、米国やベトナムから出店を望む声が出ている。昨日5月16日はワタミの創業記念日だった。思えば、38年前に創業したときも必死にあがいていた。コロナからのV字回復を、第2の創業としたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より