命懸けで国を守るウクライナ国民に胸を痛める毎日だ。ウクライナだけの戦いではない。独裁者や、核保有国の横暴に対して「人類はどう立ち向かうか」の問いかけだ。日本は、徹底した経済制裁で、プーチン大統領を追い詰めるべきだ。エネルギー価格の高騰など、企業が受ける影響もあるが平和のためのコストだと思うしかない。

20日は私の恩師である「つぼ八」創業者の石井誠二さんの命日だった。日本の居酒屋チェーンを作った人だ。私は「つぼ八」のフランチャイズ店から経営者の道を歩みはじめた。石井さんと出会ったことは経営者人生最大の幸運だ。

石井さんからは居酒屋は、ただの飲食の場ではない「人を元気にする場」だと教わった。コロナ禍で、居酒屋は「不要不急」の代名詞のようにされたが「不要ではない」石井さんが存命ならそう言うだろう。

「つぼ八」を運営している頃、近隣に、そっくりのライバル店が出現したことがあった。石井さんに「つぼ八本部」として、なんとかしてくれというと「小さなこというな。相手にせず、お客さまだけをみていれば勝てる」と一蹴された。

私が「つぼ八」のフランチャイズを卒業し、「和民」をオープンさせた当初は、赤字で経営がうまくいかなかった。すると、石井さんは「うちの店に入って、盗めるものはなんでも盗め」と当時経営していた店の黒字ノウハウをすべて公開してくれた。本当に器の大きな人だった。

ワタミは現在、焼肉店、すし店と、居酒屋以外の出店を進めている。コロナ禍でも社員をひとりもリストラしない方針である以上、生き残りのための経営はしていく。

しかし「居酒屋をやめる」とは一言も言っていない。居酒屋の市場はコロナ前の7割になるだろう。しかし、その減った市場の中で、リーディングカンパニーであり続けたい。具体的には、なんでもある総合居酒屋から、これがおいしいという専門店型の居酒屋に変化していく。これからの居酒屋のキーワードは「こだわり」だと思う。

こうした中、ワタミは経済産業省、日本健康会議の「健康経営優良法人(大規模法人部門)2022」の認定を受けた。

健康維持や労働時間の適正化、「女性特有の健康課題への対応」や「休職後の職場復帰」などが、しっかりと評価された。私が経営復帰してから、徹底して従業員アンケートと向き合う「従業員幸せ会議」を毎月開催している。今年から副社長が全社員の元を回り、悩みごとや「5年後の夢」を聞く「夢を語る会」も始めた。コロナ禍の不安解消に力を入れている。

蔓延(まんえん)防止等重点措置が解除されたが、単なる解除ではなく、政府には「ウィズコロナ」の明確な指針を示してほしい。飲食業界で働く多くの人の不安に寄り添う政治であってほしい。

最後に「なぜ居酒屋をやめないのか」と聞かれれば、答えは「好きだから」しかない。石井誠二さんの一番弟子として「人を元気にする居酒屋文化」を継承していきたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より