オミクロン株は感染力が強く、飲食店だけへの規制では効果があいまいだ。実際、東京都でも新規感染者の家庭内感染や、感染経路不明が急増中だ。飲食店だけが原因でないのに対策を変えないのは異常だ。

政府分科会の尾身茂会長も必要なのは「人流抑制」ではなく「人数制限」と表明したのなら、満員電車などにも規制を指摘すべきだ。百貨店やイベントも「面積ごとに何人まで」と人数制限を組み直すべきだ。第5波までの対策に対しての結果検証が全くなされていないのが残念だ。

政府は「ワクチン・検査パッケージ」の一時停止を決めたが、埼玉県などは活用する方向だ。国と自治体がバラバラの方針を示すのもいい加減にやめるべきだ。同じウイルスだ、同じ対処方針が当然だ。

「第6波」は3カ月続くとの見立てもある。飲食店は営業規制で、相当な打撃になる。十分な補償と強制力で、全店が規制を守る仕組みに法改正すべきだ。協力金の支払いが遅いというなら、協力金の支給証明書で金融機関が短期融資をすればいい。営業時間や酒類提供の規制を守らない店の方が、売上利益で得をするという「悪法」はあり得ない。

「悪法も法」である以上、ワタミ直営店は従う。しかし効果があいまいでは、悪法に従った飲食店が浮かばれない。

欧米などは行動制限に踏み切らず経済を回す政策だ。中国はロックダウン政策をとるが、日本は「中途半端」で最も粗末だ。新しい資本主義が掲げる「賃上げ」は、「経済を止めて」実現できるものではない。

私は例年、日本創造教育研究所さまの主催で、中小企業経営者1000人を前に新作のテーマで講演する。会員企業はコロナ前で黒字が80%という優秀な経営者たちが集う。今年のテーマは「論語と経営」。危機の経営術について語った。紹介した『論語』の言葉に「子曰く、賜や、女は予を以て多く学びて之を識る者と為すか。対えて曰く、然り。非なるか。曰く、非なり。予は一以て之を貫く」(衛霊公第十五)がある。

個々の逆境に遭遇しても自分の根本に戻って「一」(=根本、本質)に向き合うべきという重要性を説いている。

コロナでワタミも根本と向き合っている。常々私は「社員は家族」と言ってきた。雇用を守る上では、から揚げ店、焼肉店、すし店と、続々と変化対応をしてきた。ひとりの早期退職も出さない覚悟だ。

残念ながら、政府の専門家や、首相の言葉にふりまわされていたら、経営は成り立たない。論語を片手に、逆境と戦っていきたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より