中国経済が注目されている。9月27日付の日本経済新聞によると、中国の財政赤字が2025年に10兆元(約170兆円)を突破し、21年の2・3倍になる見通しだと報じた。日本同様に年金や医療の給付がかさみ、「借金体質」になっている。

日本では、退職年齢や年金支給年齢を引き上げようとすれば、反対勢力が存在してなかなか実行に移すのが難しい。ただ、中国は共産党の一党独裁で法律や制度改正に際し、国民のクーデターには懸念はあっても、通常、政策上の対抗馬がいないのでその点で懸念材料は少なく、日本の方が深刻ではないか。

中国の不動産大手「恒大集団」の経営危機も、実質的に中国政府がコントロールできるのではないかと見ている。中国政府が恐れているのは格差の拡大で、不動産バブルを軟着陸させたい目的があったのだろうが、恒大の危機が、本当に中国経済を侵食する事態にまで深刻になれば、当局はすぐに救済策に乗り出すこともできる。

コロナ禍にありながら、世界で景気が過熱する中、ノルウェーや米国も金利を上げ始め、中国もバブル規制にかかるなど、出口探しがはじまっている。一方で、岸田文雄政権は財政出動を打ち出し、世界の大勢と逆に進んでいるようにみえる。

ワタミは、和牛焼肉食べ放題の「かみむら牧場」で中国進出を視野に入れている。まず年内に香港に進出する。中国は人口が多いだけでなく、消費行動の中心となる中間層の拡大が顕著で、米国に次ぐ市場であることは間違いない。

私は中国とビジネスする場合、「チャイナリスク・ルール」を持ち続けている。損失は、会社全体の売り上げ1%にとどめる、常にその数字を意識している。中国でビジネスをする以上、日本では想定できないリスクが潜んでいる。であるなら、ルールを明確にし、損失範囲を限定的にする。ワタミがコロナ直後、いちはやく中国撤退を決め、傷口を浅くすることができたのも、こうしたルールが功を奏した。

香港問題を含め、中国を取り巻く問題が山積している。参院議員時代にも外交防衛委員長として、中国の政府高官と意見交換も重ねた。一帯一路構想をはじめ、共産主義思想の拡大を善だと思っている。

東南アジアなどの周辺諸国に資金を投資するかわり、重要な港湾を長期間借りる「侵略」のような動きも目につく。私が代表をつとめる公益財団法人が運営するカンボジアの孤児院にも、中国からコロナワクチンが無償で提供されたと報告を受けた。年々、中国の影響力が色濃くなっている国が増えている。

そうした中国の性格をしっかり認識した上で、和牛焼肉で世界を目指す。外食経営者として、日本の和牛は、世界一おいしいという誇りがある。中国でも戦える。まもなく総選挙だが、日本の政治も、世界に誇れるものにすべきだ。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より