岸田文雄首相が、総裁選で掲げていた「ワクチン接種証明の活用と検査の無料化・拡充」に外食業界としては期待したい。

緊急事態宣言の解除に伴いワタミは会社負担で抗原検査を行い、陰性を確認した従業員が接客するなどした、独自の「ワタミ安心宣言」を発表した。検査費用をはじめ安心への投資に月額約1000万円の費用をかける。全面解除といっても時短要請は続く。営業時間を区切る考えは、エビデンスも不明確だ。要請を守っていない飲食店も多く、不公平感が増しておりこれを機にやめるべきだ。

「第6波」は来ると想定して今こそ合理的な準備をすべきだ。野戦病院のような臨時施設を建設し医療体制を拡充し、治療薬の開発を急ぐべきだ。その上で、検査拡充やワクチン接種証明書を活用し経済をまわすしか、人類とコロナの共存はありえない。即座に国会で必要な立法措置を行うべきだ。

一方、首相の方針で不安なのは、数十兆円規模の経済対策をはじめ、かなりの財政出動を主張している点だ。財政破綻の危険性をどう考えているか、日銀の出口戦略も含め、明確な見解を提示してほしい。

私はコロナ以上に財政破綻は国民を苦しめると警告し続けている。年々増える年金をはじめとする社会保障費にも向き合うべきだ。財政再建に向けて「30年再建シナリオ」のようなものを作成して理解を求めるようなことも必要だ。本来耳の痛いことも言うのがリーダーだ。この国の借金体質は持続可能ではなく、いずれ破綻することは元銀行マンの首相ならわかっているはずだ。

河野太郎さんが総裁選で負けたことで、この国の脱原発は後退した。しかし、そうした中であっても、ワタミは本社ビルと中京センターの電力を10月1日から、再生エネルギー100%にした。SDGs(持続可能な開発目標)経営の象徴だ。原発の核のゴミの最終処分問題は解決されていない。そうしたことにも政治は向き合うべきであろう。

ワタミが一企業としてモデル提言する、抗原検査を使った安心宣言も、再生エネルギーの普及もコストがかかることだ。本来は、国主導で行うべきことだ。

きょう10月5日は私の62歳の誕生日だ。屋久島の宮之浦岳の登山中にひらめいた言葉は「ここから」。私は創業から29年間経営者をし、6年間国会議員を経験し、再び29年間経営者として生きると宣言している。

経営復帰後2年半がたつが、創業から2年半たった当時と今を照らしあわせている。あの頃は、失敗と挑戦の毎日だった。そう振り返れば、ここから27年かけて、1兆円企業を目指す目標も決して無理ではない。気力も体力は20代より自信がある。

就任100日間は、マスコミや世間も期待が先行するハネムーン期間だ。首相就任100日間で、この国がどれぐらい変わるか期待と注目をしている。私も社長復帰早々、これからの100日間でまだまだ秘策を実行していく予定だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より