自民党総裁選では大いに財政について議論してほしい。

コロナ不況といわれる中、7日に日経平均株価が一時3万円を超えた。ニッポン放送の番組で、近著に『大暴落』(明日香出版社)を出版した、さわかみ投信会長の澤上篤人さんと対談した。澤上さんは「実体経済と異なるこの大きなバブルは100%崩壊する」と警鐘を鳴らす。世界各国で新型コロナに対応するため、中央銀行がお金を増刷し、補正予算を組む中で余剰したお金が、債権や土地、株価の上昇につながっているだけだと語る。

日本銀行は国債やETF(上場投資信託)を買い続けており、今の株価を支えている。中央銀行は通常、国内総生産(GDP)比で10%台の財務だが、米国40%、欧州中央銀行60%に対し、日銀は130%、日本経済の1・3倍で「無責任だ」と澤上さんは指摘する。

日銀はETFを売ることはできない。全員が投げ売りする機会をつくりかねないからだ。ただ、売らないで持ち続けるのはまだ理解できても、買い続けている状態は容認しがたい。

澤上さんは著書で、「今年度の当初予算では新規国債発行額は43兆円となっている。一方、借換債の発行は147兆円である。合計では、なんと190兆円にもなるのだ」とも指摘する。

国民はすぐに大暴落が来るとは思っていないが、澤上さんは早いうちに来てもおかしくないという。「日本株式会社」ならば、このバランスシートの会社に出資する人がいるのか。経営原則ではありえない。国内の富裕層が国債を購入しても間に合わない危険な状態だと思う。

次期衆院選も1人10万円給付を再度実施すべきと主張する党もあり、与野党ともに「バラマキ合戦」になると予想される。

コロナで、観光需要減が続き、京都市の門川大作市長が先日「このままでは、10年以内に財政破綻する」と語った。もともと京都市は宗教法人や学生が多く、財源が少ない。人口減で税収も少ない現代日本も同じ状況だ。

そうしたことを意識しながら、ワタミも経営戦略を練る。まずは、円安に備えて海外事業を強化する。和牛焼肉「かみむら牧場」の海外出店を加速させる。将来的には、売り上げの半分は海外事業を目指し、円安に強い企業体質を構築する。財政破綻などの万が一の際に強みになるのはワタミファームの農業だ。その次に、ワタミの宅食やから揚げの天才といった生活に密着した事業だ。地味な事業ほど財政破綻の時は強い。

投資一筋50年の澤上さんはバブルのピークにはMMT理論のような理屈がいつも出てくるといっていた。日銀は相変わらず出口戦略を語らない。正確には出口がないのだろう。

自民党総裁が注目を集めるが、もうひとりの総裁「日銀の黒田総裁」にも国民はもっと関心を持つべきだ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より