横浜生まれの横浜市民としては、8日から公示される横浜市長選の候補予定者が乱立していることに注目している。現職の林文子市長をはじめ、大臣を辞任して出馬する小此木八郎氏、元神奈川県知事で参院議員の松沢成文氏と、私としても面識のある顔ぶれがならぶ。

先日、ニッポン放送で、今回の市長選をテーマに中田宏前横浜市長と緊急対談した。中田さんは、小此木氏は「親子2代で横浜の政治家で、中選挙区時代は横浜の半分が選挙区なので覚えている人が多い。自民党市議、県議も実質支持している」、松沢氏を「県知事時代に『松沢』と書いた横浜市民も多い、前回の参院選でも横浜でかなりの得票数を獲得している」と、現時点で当選を予測しろと問われたら、2人は有力だと答えていた。

今回の選挙では、カジノを含むIR(統合型リゾート)が最大の争点だ。市民の世論調査では反対が70%、賛成が30%。しかし、反対派の候補が乱立すると、世論とは異なり、賛成派が「漁夫の利」で当選する可能性が指摘されはじめた。

現職の林市長だが、前回の選挙でIRに賛成を表明せずに当選した。林さんはIRに反対と期待した市民も多かったはずだ。今回は、賛成派の票を独占する狙いだろうが、前回も今回も当選ありきが見透けて「政治信念」のようなものが気になる。

小此木氏は、私も同じ時期、自民党議員であったのでIR法案に党として賛成したはずだ。さらに、五輪の警備をつかさどる警察、その閣僚(国家公安委員長)の立場にあったのにも関わらず五輪直前に職を辞したことは、仕事に対しての責任感が問われる。

松沢さんは、神奈川県知事時代、私が県教育委員をつとめた関係でいちばん親交がある。禁煙政策など改革派の政治家ではあるが、日本維新の会はIRに賛成で、その党から当選した任期中に急転して、IRに反対する違和感は残念だ。

今回の選挙について中田さんは、横浜市民の感覚を「しらけてみているサイレントマジョリティーが多い」と語り、実際に重要なのは地味ながらも財政問題やグランドデザインだと指摘していた、私も強く共感する。横浜の実質公債費比率は2019年度は10・2%と、同じ政令指定都市である大阪市3・2%、神戸市4・6%と比べてかなり高い。

将来支払うことが決まっている金額を1年間の収入総額で除した将来負担比率も、大阪市が21・2%であるのに対して横浜市は140・4%もあり、「市の経営センス」がもっと問われるべきだ。

横浜を経営する観点で「いかに財政と市民生活を守れるのか」という発想が求められる。

国政同様、大衆迎合的な政策が並ぶが、中田さんいわく「横浜市民は『そんなのばかりが政治かよ』という反発もある」。私も「目先嫌わる政策」や「地味な政策」を掲げながら、信念で「横浜を経営する」、そんな候補者に本当は一票を投じたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より