東京都をはじめ今月下旬まで緊急事態宣言が延長された。日本経済へのダメージを考えても、延長を繰り返す逐次投入はやめてほしい。飲食店のアルコール提供の禁止などでは、感染者数は大きく減っていない。短期間のロックダウン(都市封鎖)を実施して、大規模PCR検査を徹底的に行うべきだ。

五輪まであと1カ月、本来、ここがそれを実施すべきタイミングだ。先日ラジオで対談した、ある経済アナリストは、今後、東京都などが五輪を強行開催するために、検査数を減らして、感染者数も減っているように見せかける可能性もあると指摘していた。そうした政策は正道ではない。五輪開催後に大きな反動で感染者数が増えれば、経済回復はさらに遅れる。

確かなのは、欧米などをみてもワクチン接種が経済回復の要になることだ。そうした中、ワタミグループでは、ワクチン2回接種を完了した人には、11月末まで生ビール1杯を無料にする取り組みを発表した。ワクチンを接種した人から経済をまわすべきという提言の意味を込めた。

緊急事態宣言が続き、一部の飲食店が要請を守らない「闇営業」が日に日に深刻化している。先日、ワタミもフランチャイズオーナーの緊急集会を開いた。複数のオーナーから、経営が苦しいから「闇営業を黙認してほしい」との声があがったが、断固として、それは認めないと回答した。

ワタミが要請を破れば、他の事業者にも営業の口実を与えてしまう。注目される企業にはそれなりの社会的責任がある。ワクチンを接種した方は、どんどんお店に来てほしいとワタミは正道の声をあげていきたい。

あるオーナーは「協力金の支払いは現段階で8月になると都からいわれた」という。協力金の入金は確定していても、目先の資金繰りが相当きびしく困っていた。政府高官にすぐこうした悲鳴を伝えた。協力金の入金が確定しているなら、それを担保条件として、金融機関がつなぎ融資に応じるよう、政府が方針を示すべきだ。

私もその昔、資金繰りが厳しい時、レジにある釣り銭をかき集め奔走した経験がある。官僚や政治家はこうした経営者の感覚に寄り添った政策を想像すべきだ。

厳しいことをオーナーには言ったが、オーナーたちに1店舗あたり10万円を現金で渡した。「頑張れ」という思いを形にしたかった。

ワタミは居酒屋が上場企業になることは難しいといわれた時代から、ひとつひとつ業界の地位向上に挑んできた。飲食業は水商売ではなく外食産業だ。ここにきて、闇営業などで、産業の社会的地位を失うことがあってはならない。

業界に正しい希望の光を持たす上でも、都知事や担当大臣は「ワクチンを接種した人から、外食をし、経済をまわしてください」とメッセージを出すべきだ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より