最近、コロナ禍のマスコミ報道に疑問がわく。文科大臣の運動会をめぐる発言一つをとっても「工夫して開催すべき」と受け取れる見出しをよく調べると「延期が好ましい」という趣旨であったり、ワクチンも7月末までに約85%の自治体が高齢者接種を完了と、かなり「高い数字」の印象を感じるが、実態は都市部では遅れ人口比でみるとそれほど高い安心材料にならない。情報があふれる中、正しい認識を持ちたい。

報道もさることながら、東京都のコロナ対応に対して、都知事選に出馬した視点から不満がある。東京都の2020年度予算は約15兆円で、スウェーデンに並ぶ一国規模の予算だ。都内総生産も21年で約107兆円(約9654億ドル)で、20年の各国国内総生産(GDP)比でメキシコ、インドネシアに次いで17位だ。この規模の予算や都債を発行すれば、大胆かつ有効なコロナ対応ができるはずだ。

ニューヨークでは主要駅で観光客を集めるワクチンツアーや、上海でも観光客の人出増が取り沙汰されている。これらの都市にできて、東京にできていないことが多すぎて残念だ。経営は成功事例のベンチマークが基本で、行政経営もそれは同じだ。繁華街での一斉パトロールなどは、優秀な都の職員にさせることではない。

都の野外公園に仮設のコロナ専門病院を建設し病床数を安定させたり、都独自でワクチン工場を建設するなど一国並みの予算がある政策を行うべきだ。

他の自治体に目を向けても、沖縄で感染者が急増しているが、沖縄などは空港で来県者全員に県がPCR検査を実施すべきだ。数千円の検査費用で多くのリターンがある。大事なのは経営視点だ。観光中心の離島は、観光客で経済をまわすしかない。各自治体、事情によって独自色を出すべきだ。地方分権を主張しながら、課題解決では国に依存しすぎだ。

ロックダウン(都市封鎖)が「私権の制限」になると指摘されるが、外食は1年以上も私権を制限されている。この局面を打開するため短期のロックダウンも検討すべきだ。このまま小池都知事は東京五輪の開幕・閉幕まで飲食業への営業自粛を続けるつもりなのか、私権を制限された犠牲のもとでの五輪は本当に正しい開催なのか問いただしたい。

ワタミは14日に決算発表を行ったが、大事なのは「ここからどう出るか」に尽きる。翌週の創業記念祭で5年後のワタミの姿を全社員に示した。1年後にコロナが収束すると仮定し、そこから経常利益60億円の戦略を具体的に共有した。焼肉事業、ファストフード事業、ワタミの宅食事業と、V字回復を牽引(けんいん)させる準備は着々と進む。社員には「ひとりのリストラもしない」と宣言した。

各自治体の首長もリーダーだ、自治体ごとに独自色やビジョンを明示しなければ、この国に地方創生などない。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より