コロナ禍の国会論戦が注目されているが、東京五輪・パラリンピックに向けて野党は、選手と一般市民がともに感染した場合、どちらを優先するのかときびしい質問を飛ばす。官邸もギリギリまで情勢や世論を見極めているのであり、菅義偉首相も現時点では、「安全安心な大会が実現できるように全力を尽くす」と、受け身で繰り返すしかない。

ここは思い切って開催の基準を示す、提案型も検討すべきだ。たとえば、7月1日時点のステージや重症患者の満床率など基準を提示し、クリアできなければ開催、できなければ中止と、国民と目標をひとつにする。開催に向けて協力するのか、しないのか、国民それぞれが意識を持つ。

野党も、政府が嫌がる質問ばかりでなく、建設的な政策提言をすべきだ。解散を嫌がり、内閣不信任案を提出しない姿勢を見ると、二大政党制は、まだまだこの国には根付かないと感じる。

それでも、日本は民主主義が機能し、国民が未来を変えることができる。海外に目を向けると、ミャンマーのクーデターの混乱は無視できない話題だ。

私は参院議員時代にカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムのメコン5カ国と親交を推進する「日本・メコン地域諸国友好議員連盟」を旗揚げし、事務局長に就任した。当時は軍事政権から国民民主連盟のアウン・サン・スー・チー政権移行後で、日本が進出する上で国民性もよく、人件費も安い、世界の工場になりうる素晴らしい国とみられていた。

議連の会合でスー・チー氏のスピーチを聞いたが素晴らしく、改革や挑戦で、民主的で豊かな国を作ろうという政治信条に共鳴した。

ただ、ミャンマーの現地視察では違和感も覚えた。首都ネピドーは、道路は8車線、軍用機が通れるほどの道幅があった。まさに戦闘に備えた要塞のような都市だった。上下両院も4分の1は軍人枠が残っていた。スー・チー政権も、力のある国軍へ遠慮しているように感じた。

民主化と逆行する今回のクーデターについて、日本もアクションをとるべきだ。具体的には、政府開発援助(ODA)の拠出を一時止めるべきだ。今、支援を続ければ、国軍に私たちの税金が届くことになる。拠出にふさわしい国に戻ったら再開すればいい。市民が民主化を掲げ戦っている姿をニュースで見せられることは辛い。

日本は、オリンピック開催国として今、世界からもとくに注目されている。オリンピックの理念はそもそも平和だ。難しい事情が多々あるのだろうが、開催することで、不幸があってはならない。国、東京都、組織委員会、IOCと決定権やリーダーシップが誰にあるのかも、いまひとつ不明だ。合議制や、受け身の発言では、この先の事態は好転しないだろう。

私は経営者として迷ったときはいつも「理念」に立ち返り、最後はたったひとりで決断する。難しい局面こそ、解決策はそれしかない。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より