発令中の3度目の緊急事態宣言がさらに延長される。人出も感染者数も大きく減らない。もう一段、強制力をもって取り組んでほしい。

逐次投入式の施策ばかりで、「遠く」を見ていないことが問題だ。結果論だが、1年前に重症者用のコロナ専用病院や国内にファイザーのワクチン工場を建設するなど手を打つべきだった。コロナ禍はこの先1年は続くとみて、今からでもそうした手を打つべきだ。

外食産業は“捨て石”になったが、裾野が広い業界であるため、仕入れや物流など隣接事業への影響も大きい。そうした中、政府が方針を示した、日本政策投資銀行の外食・観光業支援は英断であり、大変有効な政策だと評価したい。

4月29日に岩手県陸前高田市に日本最大の有機農業テーマパーク「陸前高田ワタミオーガニックランド」をオープンさせた。津波で大きな被害を受けた10年前からみると、この土地で有機野菜を育て、バーベーキューを楽しむ姿は、想像できない光景だ。

困難がいくつもあり、これまでも諦めようと思う場面があったが、その都度、前に進んできた。コロナ禍の逆風での開業だが、今後20年をかけて施設を拡大していく。皆さんが足を運ぶのもコロナ収束後となるだろうが、ここにワタミオーガニックランドの「5つの命題と大きな夢」と題した設立趣意書を紹介したい。



 1、人は人として成長するために生まれてきた。その成長の環境を整え、「きっかけ」を提供します。

 2、たくさんの生命が東日本大震災で失われたこの地で訪れる一人一人が「生命」と向き合う場所であり続けます。

 3、「環境」は、どうあるべきなのか、「食糧」はどうあるべきなのか、「エネルギー」はどうあるべきなのか、地球への提言の場所であり続けます。

 4、世代を超え、国境を超え、人種を超え、あらゆる障害を超え、あらゆる人が集まる場所であり続けます。

 5、子どもは、未来の地球に対してワクワクし、大人は、未来の地球に対して責任を感じる場所であり続けます。

 私たちには夢があります。

 “いつの日か地球が一つになること、地球から悲しみの涙がなくなること、地球に喜びの笑顔があふれること”

 訪れる人全てが、楽しい思い出を作ってもらえるような場所であり続けます。



事業は「想い」を形にすることだ。たくさんの人に参加してもらうことで完成する。開業に際して、菅義偉首相や、サントリーホールディングスの佐治信忠会長から祝電をいただいた。皆さまからの期待に気持ちを新たにした。本気になれば、一民間企業が、被災地に有機農業テーマパークを作ることができる。コロナ専用病院やワクチン工場も、国が本気になればすぐできると考える。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より