政府は21日に首都圏1都3県の緊急事態宣言を解除した。しかし、解除後も飲食店に対し営業時間短縮要請が続く。外食業ばかりが捨て石になる中、私は今月11日頃、政府高官に外食業界全体を考え政策提言を行った。銀行のあり方についてだ。

私が出演するニッポン放送のラジオ番組にも「返済猶予」や「追加融資」に銀行が応じてくれないという内容が多く届く。コロナ前に受けた融資の返済も一時猶予すべきだ。これは「返済猶予の方針」を金融庁が示し、不良債権化しないとすれば済むことだ。

次に、政府系の日本政策投資銀行の活用だ。ANAを支援しているが、まだ資金はあると聞く。幅を広げ、外食業に対しても、政府系銀行が、低金利の資本性ローン(劣後ローン)を融通できるようすべきだ。国家財政も、融資であれば痛まない。

劣後ローンは、借り入れの一部を資本として算入可能で、傷んだ自己資本を戻すことができる。政府系銀行のお墨付きが与えられれば、銀行も対応しやすい。時短要請の協力金では足りず、赤字が拡大する一方だった、中堅や大手の救済になる。劣後ローンは出資に近い。

ただ、あくまで融資であり返済を念頭とした経営は必要だ。銀行との交渉では、未来の事業計画と、経営者にやり遂げる「氣」が示せるかにかかる。

米国発のブランドで、国内ではワタミが現在15店舗展開するアメリカンレストラン・バー「TGIフライデーズ」の品川駅前の基幹店が、リニア新幹線の再開発で幕をおろすことになった。業態の日本展開に際し、米国本部との間に繰り広げた「ロイヤルティー5年間ゼロ」の交渉を思い出していた。

同業態は、5年間で12店舗の計画を立てたが、1店舗あたりの投資額が多く、最初から利益を得られるビジネスではない。キャッシュアウトが増えれば、出店が続かなくなる可能性もある。ゆえに互いにウィン-ウィンなのは、5年間はロイヤルティーをゼロにして確実に出店するという提案だった。

テキサス州ダラスの本部で先方は、顔を紅潮させ机を叩たたいて「ありえない」と怒っていた。私は「お互いのためなんだ」と粘り続け、最後はついに納得させた。

難しい交渉では「相手が望むことは何か」「この交渉で何をしたいか」と考えれば、交渉内容も見える。交渉の成立のポイントは「お互いのため」を、理解してもらうことだ。全国の経営者にも、銀行とのタフな交渉をがんばってほしい。何より、夢を語ることだ。私も、リニア新幹線が開通するとき、品川にまた大きな「TGIフライデーズ」を必ず出店する。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より