1都3県の緊急事態宣言は再延長となった。感染者数は下げ止まり、日によっては、前日や前週より上昇することもある。これは飲食店の時短要請だけでは、打ち手が足りない何よりの証拠だ。感染は、介護施設、病院、家庭内で起きている。土日を中心に多くの人が外出しており、「名ばかり緊急事態宣言」だ。こうした問題点の解決がないまま、飲食店だけに過度の負担を強いる宣言の延長には大反対だ。

飲食店は、生産者や卸し業まで、裾野が広く、多くの悲鳴が寄せられる。そうした中、「焼肉の和民」では、生産者応援で「A5和牛カルビ一年間食べ放題キャンペーン」を発表し昨日からスタートさせた。薩摩牛と仙台牛のA5ランクの和牛は、本来、高級ホテルや料亭で扱うものだが、コロナでそうした需要は一気に消えた。生産者や卸し業の方は困っている。

そこで、一年分ワタミがそれを買い取ると決めた。通常通販価格100グラム2300~2500円程度だが、それを、4380円で食べ放題とした。200グラムを食べれば元がとれる計算だ。もちろん、食べ放題コースなので、他のお肉や、居酒屋メニューも楽しめる。

生産者からお客さままで、全員が「ウィンウィン」になれる企画だ。こうした企画はすべて「想像力」からはじまる。ここから先、感染者数を本気で減少させるためには、官僚や政治家も、想像力をフルに働かせるべきだ。そもそも飲食店の感染対策は、坪あたりの客数や、1組あたりの人数制限の方が、合理的な要請だ。「飲食店」とひとくくりにするが、業態ごとに画一ではない。

先日みたテレビ番組では、ショーパブを取り上げていた。その店は、1坪あたり4席程度だった、たしかに密集していた。こうした店は休業と補償をしっかりするべきだ。これに対しワタミが運営する料亭型の飲食店では1坪0・8席。十分な間隔がとれる。

坪数あたりの席数につき「0・5を守りなさい」など、エビデンスに基づく具体的な要請を出すべきなのに、相変わらず、午後8時や9時といった営業時間で区切る雑な政策を押し付けてくる。補償も、家賃額や従業員数に関係なく、一律を続けている。担当大臣は、この1カ月、飲食店補償の不公平の見直しを、本気でしたのだろうか。

飲食店はコロナとの戦いの犠牲である。特攻隊のような役割を背負わされている。「もう限界だ、この先が怖い」という相談が私のところにも届く。国のために協力はする。

しかし、この作戦で、必ずコロナに打ち勝つという納得がなければ浮かばれない。無駄死にはごめんだ。
 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より