緊急事態宣言が続く中、厳しい決算を迎えている企業も多い。そうした中「生き残る企業」について考えてみたい。

究極のところ、生き残る条件は「キャッシュ」であり、「銀行次第」だ。まずは、銀行がこの企業は「生き残る」と思う経営をすることだ。従来通りの杓子(しゃくし)定規の経営ではなく、コロナ禍に対し、しっかり手を打ち、事業計画を組んでいるかを銀行は見る。

先日もワタミの宅食は、牛乳宅配の明治と、相互の商品を宅配する大型提携を発表した。業界1位同士の提携で注目されたが、生活様式が変わる中、「変化への対応」の象徴だ。

ただ、銀行や事業計画だけでなく、取引先との「絆」も大事だ。先日、ある駅前のビルオーナーからお手紙を頂いた。1等地であり家賃も高く、店の撤退を考えていた。しかし数十年、ワタミはそこで居酒屋をやってきた。手紙には、これまで借りてきた付き合いを「誇り」と表現してくださり「家賃を下げても、残ってくれませんか。いくらなら続けてくれますか」と応援が記してあった。

ある取引先の営業マンは「うちの商品を今までいちばん売ってくれたのはワタミだ。これからも1番でいてほしい」と、相談した以上の支援条件を提示してくれた。過去もそうだが、苦しい時には、こうした感謝で胸が熱くなる「ドラマ」がおきる。「信頼」という無形の財産が、今回のようなドラマにつながる。

先日、国内最大のSDGs(持続可能な開発目標)イベント「SDGs AICHI EXPO」で特別講演をする機会があった。これからの時代、生き残る企業は「SDGs経営」を行っている企業だといわれる。突貫工事で「名ばかりSDGs」に取り組む企業もあるが、ワタミは30年前から、レモンサワーのレモンの農薬が気になり有機農業をはじめ、発泡スチロールの容器が気になり環境事業に取り組んできた。

今までやってきた経営とSDGsの理念が重なったというのが正しい表現だ。再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデル、通称「ワタミモデル」はサスティナブル(持続可能)の実績モデルだ。ワタミの宅食のお弁当をバイオマス容器にし、回収し、再生する「リサイクルループ」を実現した。

損得だけで言えば、使い捨てプラスチックの方が安い。目先の損得で、利益を得る企業もあるだろう。しかし、長期でみた場合「生き残る企業」は、「神様が応援したいと思う会社」だ。その「神様」という2文字は「大衆」とも置き換えられる。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より