今回の首都圏の緊急事態宣言は、飲食店のみにきびしく効果も疑問視されている。流れを作った首都圏の知事は、この政策で効果が出なければ政治責任をかけるぐらいの覚悟を求めたい。政府分科会の尾身茂会長は5日の会見で、「飲食店(対策)は重要だが、そこだけでは感染を沈静化できない」と述べている。これでは飲食店は浮かばれない、捨て石だ。

一律6万円の補償金も、創造力が欠如している。私の友人は郊外で、夫婦ですし店を経営している。こうした飲食店には相応の補償だ。

しかし、都心で大勢の社員を雇用する外食店には、この補償では焼け石に水である。私権を制限する以上、補償は相応であるべきで、昨年度の納税や粗利をベースにした算出や、英国のように社員の賃金を直接肩代わりする補償を検討すべきだ。

政府の分科会にいる「経済の専門家」もマクロ経済に精通するだけで「経営の専門家」ではなく、有益な提言を感じない。業界団体の日本フードサービス協会も組織内候補の議員がおらず、政府に強いロビー活動ができない。本来は、1カ月後の倒産件数や失業者数をシミュレーションするなど警告を発信すべきだ。このままでは「外食産業は崩壊」してしまう。

無論ワタミも、自治体の要請は受け入れる。しかし午後8時までの時短要請は、実質、居酒屋には休業宣告であり、オフィス街を中心に居酒屋の8割(83店舗)は「終日休業」を判断した。

一方、雇用はなんとしても守る。緊急の経営戦略として、まずお弁当宅配の、ワタミの宅食で「ワンコイン・テレワーク弁当」を投入する。管理栄養士が考えた健康なお弁当を自宅まで500円で届け、在宅勤務需要を取り込む。外食事業の社員も可能な限り宅食事業に振り向ける。

さらに、から揚げの天才では「ステイホームパック」と銘打ち、テークアウト、デリバリーを一段強化する。「焼肉の和民」は、配膳ロボットや特急レーンで、非接触率居酒屋比8割、3分に一回店の空気がすべて入れ替わる、最新最高レベルのコロナ対応を行っている。行政の要請内の営業時間で、1980円食べ放題の値下げプランを投入し、昼間の需要を取り込む。それでも賄えない社員の雇用は、人財派遣のワタミエージェントを通じて、異業種への出向を加速させる。

外食業界全体を見れば圧迫は限界にきている。ある近しい社長は「心が折れる」と繰り返す。専門家は「1カ月ではとても感染者数は減らない」と指摘している。一刻もはやく特措法を改正し、強制力と雇用が守れる補償制度を作るべきだ。

最後に、医療崩壊寸前の中、医療従事者には敬意しかない。コロナ対応にあたる病院に、ワタミの宅食のお弁当を「1万食」無料支援させていただくことを決定した。「医療崩壊」「外食産業崩壊」ともに「崩壊」をおこしてはならない。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より