今月22日、ワタミグループ初の立ち飲み「から揚げの天才酒場」を五反田駅西口にオープンした。コロナ対応で、入口を開放した常時換気型で、酒類もセルフサーバーによる完全非接触型とした。セルフの分、低価格を実現し、から揚げ99円、サイドメニューも99円、ハイボールは182円、1000円で大満足の世界観を作った。やはり安ければ、居酒屋の原点である「軽く行こうか」という需要にも通用する。

この店は、立ち飲み、テークアウト、デリバリーとコロナ禍に強い3要素を取り入れた。新業態「焼肉の和民」に続き、ワタミは変化のスピードをあげた経営を続けている。

年末を前に「渡美塾(渡邉美樹実践経営塾)」に参加する飲食店経営者にも迷いがみえる。持続化給付金や緊急融資などの手元資金も目減りし、忘年会需要も見込めず、厳しい年末を今後迎える。

飲食店経営者は今、3つの選択肢の中にいる。まず「いずれ何とかなる」と現実逃避し、動かないという選択肢をとる人。次に一度撤退して再スタートを切る選択肢を選ぼうとする人。しかし、撤退と再スタートには相当な精神力とエネルギーが必要だ。そして最後の選択肢が、清算だ。

経営塾では、「何もしない」「動かない」は最悪だとアドバイスしている。経営者は「明日変わるかもしれない」という「悪魔のささやき」の罠にかかりやすい。一度撤退する場合、再スタートでは何をはじめるかが重要だ。限られた資金であり、その投資に対して効果的な利益を生む事業を探すべきだ。999万円で出店できる「から揚げの天才」も1つの武器になると思う。

政府の外食支援事業「GoToイート」も進んでいる。実施には賛成だ。しかし、グルメサイトが主導する政策には疑問が残る。飲食店側が送客手数料をサイト側に支払う仕組みで、さらにサイト内の掲載優劣は、飲食店側の取り組み(資金)次第で変わる。公的な支援策にも関わらず、サイトの「裁量」や「利益」が相当ある。

飲食店目線で考えれば、全国で使えるバウチャー(金券)を配ってくれた方が、わかりやすくフェアであった。菅義偉首相は、「国民目線」の規制改革を掲げている。官僚には「飲食店目線」で政策を立案して欲しい。

一方、国に助けて欲しいという弱気だけでは、このコロナ不況を乗り切れないと思う。自分で未来を切り開くしかない。来月開催する「渡邉美樹・テリー伊藤から揚げの天才フランチャイズ募集説明会」にも多くの応募が来ている。

「から揚げの天才酒場」では1リットルの特大ジョッキが名物だ。コロナ禍でも、大きなジョッキを片手に、大きな夢を語りたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より