ワタミは、横浜銀行がコロナ後はじめて実施する、資本性ローンの第1号に選ばれた。外食業界初、上場企業としても初となる。30億円を調達し、コロナからの反転攻勢の態勢が整った。

資本性ローンは融資でありながらも、金融審査上、自己資本としてみなされるため、自己資本比率が上がる。傷んだバランスシートを救済する有効な手段だ。増資という選択肢もあったが、大戸屋などの件をみても、安定株主というのは重要であり、「理念経営上」増資には慎重になる。

安定株主比率を守りつつ、攻めに出る唯一の方法がこの資本性ローンだ。横浜銀行の頭取が、この資本性ローンを強化するというコメントを日本経済新聞でみて、いの一番に手を挙げさせていただいた。

横浜銀行によると、ワタミが外食だけでなく、宅食など事業を展開するポートフォリオや、宅食の休校支援や、外食社員の外部出向など、状況が変化する中での意思決定のスピードをみて、不確実性が高い中、「ワタミは乗り越えるのではないか」との評価が審査のポイントになったと聞く。

そもそも、横浜銀行とのお付き合いは長い。私をモデルにした高杉良先生の小説『青年社長』にも横浜銀行の支店長が登場する。最初にゴルフに誘っていただき、走りっぷりを見て融資をしてくれた支店長や、「つぼ八」から「和民」に転換した際、自らの決済額以上の融資を決めてくださった支店長など、恩人の姿も脳裏に浮かぶ。

今回の融資でも横浜銀行の期待に応えたいと思う。
銀行との付き合い方での反省は、上場後に実質無借金で付き合いが薄くなったことだ。いつ融資を受けるかわからない前提で、信頼や情報を積み重ね、無借金でも銀行との付き合いは大事にするべきだ。

何より、銀行は経営の最高のアドバイザーになる。事業計画を出してお金を貸してくれれば、第三者が認めてくれたことになる。私の父が「銀行から借りられなかったら事業を進めるな」と語っていた本意だろう。これに対し、自転車操業で、延命だけの融資を受けることは悪い借金だ。

現在のコロナの逆境下では、事業計画を見直す謙虚な姿勢で、銀行が納得するようなビジネスモデルを再構築しなければならない。現状把握から入る現状否定の姿勢が大事だ。私も現状を否定し、銀行に新しい事業計画を提示し、反転攻勢に出る。

よく銀行は「雨の日に傘を貸さない」というが、こうして、きちんと傘を貸してくれる銀行もある。雨のあとには虹がかかる、そう信じている。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より