私は、菅官房長官の後押しで参院議員となった。議員時代、数々、規制緩和で既得権と戦う発言をしてきたが、その最大の理解者であり感謝している。今回、自民党総裁の決め方について異論が出ているが、冷静に顔ぶれを見ても次の総理は菅さんしかいない。石破さんについて「懐が狭い」、岸田さんについて「線が細い」という人物評を度々、聞いてきた。

菅さんは、3候補で唯一、世襲議員でない。秋田から上京し、段ボール工場で働きその後、法政大学に進学。たたき上げでこれまでの人生を歩んできた。私も含め、多くの国民はたたき上げだ。そうしたハングリー精神の持ち主が、国難の今、リーダーをすべきだ。

菅さんは、小さなことでも、約束したことは必ず守る。メールのやりとりなども驚くほどマメだ。さらに「自分を自分以上に大きくみせようとしない人」だ。こうした誠実さは、外交において、世界各国の首脳に、必ず信頼される。

菅さんが主導した、ふるさと納税や観光インバウンド政策の功績は大きい。そのほか、東京湾アクアラインの通行料値下げや、高速道路のETC夜間割引、携帯電話料金の引き下げなど、経済活性化のために既得権を廃し、消費者に還元しようとする一貫した姿勢に共感する。総裁選は、菅さんで決まりだろうが、本当に応援する者としては、その先を見据える。ぜひ菅さんには、次期衆院選で圧倒的な勝利を収めてほしい。

正直、今回これだけの派閥に支持を受けたら「しがらみ」が生まれてくる。その「しがらみ」を乗り越えるためにも、国民的な人気や支持を背景に、真の改革を実行していただきたい。河野太郎さんのような「しがらみ」に遠慮しないタイプの人が、官房長官などで菅さんを支える人事も期待したい。

誰が総理になっても、コロナ対応の先には、経済成長に向けた規制緩和や、増税、社会保障改革の、きびしい現実がこの国には待ち受けている。財政再建にも本気で取り組まないと、ハイパーインフレの危機がある。「ハイパー」のつかない程度のインフレと円安の、難しい国家経営を行うしかない。

議員時代、財政再建を訴える私の政治理念に逆行する、ある法案が持ち上がった。採決の際は棄権を考えた。その際、菅さんは私の意志をくんで一言、「私も若い時、そうでしたから」と、意志を貫くことへの理解を示してくださった。やはり人生、ここぞというときは、強い意志が道を決める。菅さんの座右の銘は、「意志あれば道在り」。その道を邪魔する人がいないことを願う。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より