新型コロナの休校措置を受け、一部の知事から「9月入学論」が浮上したが、「浅はか」に感じた。一言で言うなら、秋にコロナの第2波が来たら、今度は「何月入学」にするつもりなのか。

9月入学については、自民党のワーキングチーム(WT)も今年度からの導入は「難しい」と結論づけた。先日、WT座長を務めた柴山昌彦元文科相とラジオで対談した。

柴山さんは4月の会計年度、4月の一括採用や各種資格試験の日程を挙げ、新型コロナの影響があるといっても、「恒久的に動かすにはいろんな法律や慣行を変えなくてはならない」と語っていた。翌年の入学者が増え、教員不足や授業料の増加などの課題もある。義務教育の開始年齢が先進国で1番遅くなり、待機児童も増える懸念がある。

学校経営者の目線でも、年間の計画をゼロから練り直さないといけない。私が理事長兼校長をつとめる私立郁文館夢学園は、この4~6月も、オンライン学習などで、きっちりとカリキュラムを消化してきた。

私は2011年に出馬した東京都知事選で「10人に1人は1年留学」を公約に掲げた。「浅はか」な9月入学には反対だが、グローバル人材の育成は大賛成だ。

郁文館グローバル高校では英語圏のニュージーランドに日本でいちばん留学生を送っている。9月入学イコールグローバル人材でなく、本物のグローバル教育はもっと奥深い。そもそも、留学しようという子供のチャレンジ欲を伸ばす夢教育からだ。

対談の最後、柴山さんと「子供たちがチャレンジをしていくことをサポートする。足を引っ張らない、やる気を伸ばす教育をすることが重要だ」という点で、同意した。

むしろ、コロナを機に見直すべきは、日本の教育のあり方全体だ。オンライン教育を整備する好機だ。再開した学校や通学の電車では「密状態」もある。ワクチンが開発されるまでは登校しなくても教育が継続できる環境が必要で、早急に態勢を作るべきだ。定額給付金や、持続化給付金もいいが、日本中の生徒全員にオンライン学習用のパソコンを配布すべきだ。

経営努力という言葉は、学校経営にも当てはまる。もっと学校が独自色を出し競争するべきだ。国は今、「暗記型」から「思考型」への教育制度の転換を主導している。その前に、本当に深く「思考」した結論が、今年度からの9月入学だったのか、知事に問いたい。

都知事選でも各候補には「教育政策」をしっかりと主張してほしい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より