緊急事態宣言が出されて2週間。「経営者の生の声」は衝撃だった。「最悪のシナリオ」として、飲食店経営者の75・9%が、このままでは「倒産・清算」だとSOSを出している。

約350人いる「渡邉美樹実践経営塾」(渡美塾)の経営者と、約100名いるワタミの「フランチャイズオーナー」に緊急アンケートを実施した。黒字経営が大半を占めていた、渡美塾のアンケート回答者の40・4%が、「売上70%以上減」と回答している。「資金繰りはあと何カ月大丈夫か」との質問には、「3カ月以内」が29・8%、「6カ月以内」が23・4%と、「半年後」には、中小企業の半分に、大きな山が来ると推測され、これは「戦争中レベル」の非常事態だといえる。

金融機関に相談に行った6割が「真摯(しんし)に政府の方針通りに相談が乗ってくれた」と回答したが、4割は「そうでなかった」と不満もみられる。無利子・無担保で万全の資金繰りを期すると政府は言うが、実際は「金利」を求められるケースや、万全に程遠い「額」だったり、融資の面談や判断を「待たされている」というアンケート結果が並ぶ。

いずれにせよ、経営者の「気」が試される場面だ。それは「強気」であり「勇気」である。絶対に会社を潰さないという「強気」これは大事だ。しかし、2週間がたち、わかってきたこともある。居酒屋の場合、東京都では午後8時までの営業時間の短縮が要請されている。急場の取り組みで、ランチや宅配を始めても、たいした「利益」にはつながらない。やはり家賃と人件費が圧倒的に大きい。固定費をカバーするほどは見込めない、これは外食経営者として断言する。

赤字店舗との向き合い方は本当に難しい。今後の見通しを立てる中で、撤退の戦略も考えながら、決断していくことが重要だ。私は、「3年後に借金返済できているストーリーが描けるか」が1つの基準になると思っている。万が一、3年後に返済できるストーリーが立てられなければ、「勇気ある撤退」も考えた方がいいだろう。

私もこれまで、何件もの赤字店舗を撤退させてきた。撤退とは「守るため」で、「ストーリーの作り直し」であり負けではない。私はコロナ終息後、1~2年も余波が続くと思う。中国では都市封鎖が解除されても繁華街の人出は元に戻りにくいと聞く。

ワタミでは、従来の売り上げの6割でも赤字を出さない外食の業態への作り直しを考えている。金融機関には、「6割でも持つ」ことを示さないといけない。相談時にも「メニューを絞り、原価率を下げることで生産性が上がる」などと合理的に説明する。経営とは「明日をみせる」ことなのだ。銀行も明日がみえない会社には貸さない。

「片目で土を見て、片目は星をみる」、つまり「現実をみて、夢を語る」。あるワタミの若いオーナーに会った。今回、「4億円」の借金を背負うと言う。しかし、国にも世の中にもひとつも文句を言ってなかった。ただ、伝わってくる「気」は相当だった。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より