コロナショックでマーケットが乱高下している。ニッポン放送の緊急企画で、元モルガン銀行東京支店長で伝説のディーラーと呼ばれた藤巻健史さんと対談した。参院議員時代、お互い財政破綻を心配し、日銀政策にきびしい国会質問をしてきた。会うなり「このままだと日銀は危ない」と語りだした。

日銀は今月、金融市場の混乱などに対応すべく、ETF(上場信託投資)の購入枠を年間6兆円から12兆円に買い増すと決めた。黒田東彦(はるひこ)総裁はETFの損益分岐点を「1万9500円程度」と国会で認めている。年度末にかけて、今は全力で株価を買い支えているが、4月以降はウリに押されるだろうと、伝説のディーラーはみていた。

藤巻さんの最新刊は「日本・破綻寸前」。コロナショックの前から書き出している。そもそも「破綻寸前」だったところにコロナ危機が重なった。私も外食企業のオーナーであり景気対策は訴えたい。しかし、国家財政も心配だ。コロナを「破綻」の引き金にしたくない。

他の国と違い、すでに1000兆円を超える借金があり大規模なバラマキをする「のりしろ」は本来、日本にない。藤巻さんも「バラマキは対症療法」であり、膿がたまるだけだと指摘。日銀の危機対応がきっかけで、ハイパーインフレが起きる危険性を強く指摘する国会議員もいない。米国が利下げに踏み切り、日米の金利差が低くなる中、国力の差を考慮し、最悪のシナリオは日本売りの「円安・株安・債券安のトリプル安」だ。そうなると日銀の債務超過が現実となる。

ある日、日銀が信用を失えば、円が信頼を失いハイパーインフレがおこる。給料や年金より、パンの値段の方がどんどん上がる、国民生活にとっては地獄だ。資産を守る方法は「ドル資産を持つのがいちばん」だ。

トリプル安にならなくても今の日本には危険性がある。政府は大量の国債を発行している。仮に景気がよくなり、金利が上昇したら、それはそれで莫大(ばくだい)な国債の金利の支払いに押しつぶされ、日本は財政破綻してしまう。本来、これが藤巻さんのメインシナリオだった。

日銀が買い続ける大量の株も、大量の国債も、いつやめるのか、いつ売るのか「出口戦略」がない。中央銀行が買い続けてよいわけがない。それが許されるなら世界中の貧しい国がそうする。藤巻さんは「黒田総裁には債務超過のシミュレーション結果を出し、『債務超過しない』といえる情報を開示してほしい」と語った。

最後に番組がこんな質問をした。日本が財政破綻になる確率は…? 藤巻さんは「100%」と答えた。その時期は、来月かもしれないし、2~3年後かもしれないと答えていた。私は「10%」は希望を持ち、オリンピック延期で、2023年頃がターニングポイントになるのではと答えた。

今回の対談で、改めて日本国民が「お金を持っているから大丈夫」ではなく、国民が無理やり支えてきたがために余計に膿をためていることに気づかされた。日本のハイパーインフレは10~20倍程度では済まないと感じた。「日本・破綻寸前」。外出自粛の今、読むべき本の1冊だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より