新型コロナウイルスの感染拡大が続く。経営者から見て、政府には“リーダー”として、「最後は俺が責任を持つ」という「腹のくくり方」と国民を納得させる「メッセージ」を期待したい。

決断や指示は、その目的と方向性の共有が何より大事だ。夏にオリンピックを開催するには、ここで大規模な封じ込め対策が必要だと総理が演説し、その目的のもと、国民に理解と協力を求めるべきに思う。イベント中止や学校休校にも、多くの国民が唐突なものを感じている。政府は現状をどう把握していて、収束までの道筋はこうで、そのために、イベント中止や学校休校が必要だ、とメッセージを出すべきだ。もちろん官民一体となって国難に立ち向かうべきで、ワタミも生活インフラ「ワタミの宅食」等で貢献したい。いずれにしろ、先の見えない未来に判断を下すのがリーダーの仕事だ。

リーダーといえば、ヤクルトを3度の日本一に導くなど活躍した、名将・野村克也さんが亡くなられた。私も2010年に共著『これだけで「組織」は強くなる~戦うリーダーの作り方』を出するなど親しくさせていただいた。「ボヤキ」で知られたが、笑顔が魅力で、その表情から、根は心底やさしい方という印象を抱いていた。当時は、楽天の監督を解任された直後で、不満から「納得いかない」という、気持ちの強さを前面に出されていた。

共著では、お互いの組織論をぶつけあった。リーダーが100人いれば、100通りのリーダーシップがあるが、共通する点、共感する点も多かった。特に「データを徹底的にとる」という考えは一致した。どちらかに賭ける場合、確率の高い方に掛け続ければ、勝率は高くなる。経営も、それは同じだ。その上で、リーダーの判断は、最終的にひらめきや直感という「勘」もある。

しかし、勘は経験則であり、経験が求められる。重要局面で大事なのは、決断に「俺が責任をとる」と、腹をくくれるかだ。リーダーの姿勢で組織が動く。

野村さんは子供時代、貧しい環境で育った。そのハングリーさが、努力や向上心の基盤にあった。正念場の気持ちの強さもあった。私も、父が会社を清算し、貧しい経験が、今の生きる強さの基盤だ。

日本はゆとり世代が増え、ハングリーさや強さが欠ける子が増えている。それがそのまま、国力の低下となってはいけないと危惧し、私も経営する郁文館夢学園で、人間力向上を意識した教育を目指している。国会議員を見ると二世、三世として、裕福に育った人が多い。コロナウイスル危機の今の日本は、国難だ。政治家や、リーダーには、腹をくくるという姿勢や正念場での強さ、人間の器を期待する。

共著では、私が「組織の99・9%はリーダーで決まる」と述べ、野村さんが「リーダーの器が大きくなれば、組織も成長する」と持論を展開した。国難の今こそ、改めてリーダー像を考える。最後に、郁文館高校の野球部の監督を野村さんに引き受けてもらい、甲子園を目指す、夢のプランがあった。夢であったが、わくわくした。心からご冥福をお祈りしたい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より