国の予算、未来を決める来年度の予算委員会。本来「ANAホテルの明細書」や、高級官僚の「コネクティングルーム」の話をする場ではないと思う。2019年10~12月期のGDP(国内総生産)が5四半期連続でマイナス成長だったが、新型肺炎の国内の感染拡大もある中、経済に対してもっと「危機感」を持つべきだ。

安倍晋三首相は先月20日の施政方針演説で、「来年度予算の税収は過去最高となりました。公債発行は8年連続での減額であります」「引き続き、2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化を目指します」と話した。

最大の問題は「2025年PB黒字化」という発言だ。内閣府が今年1月に経済財政諮問会議に提出した試算では、「成長実現ケース」の場合ですらPB黒字化は27年度になっている。国債の規模にもふれておらず、国庫に入るか未定の税収を「入りました」と過去形で述べていることも問題に思う。

私が、予算委員会に立つならば、この「3つの問題」を指摘し、日銀の出口戦略を問いたい。

1989年末からの「失われた30年」で米株価は10倍になったといわれるが、日経平均は落ちている。感染拡大を受け、インバウンド(訪日外国人)や中国の生産拠点が停滞し、物流インフラ自体が影響を受けている。コロナウイルスの終息が不透明で、景気に与える最大のイベント、東京五輪・パラリンピックにも不安要素を抱える。

さらに、米・イラン関係も緊張状況にある。これだけ「経済の不安要素」がある中での予算委員会だ。日本の財政破綻のトリガーになりかねない事態に、政府や政治家は、あらゆる最悪のシミュレーションを織り込み、話し合うべきだ。

もちろん、中長期でこの国が抱える「人口減少」対策も質問、提言したい。労働人口を増やすしか道はないが、私は財政再建論者でありながら、少子化対策への歳出拡大は惜しむべきではないと考える。出生率を現状の1・42から政府が示す「希望出生率1・8」を目指すには成功事例に学ぶべきではないかと思う。
私は、フランスをモデルに《3人目以降は1人当たり1000万円を出すなど、大胆な少子化政策》《出生率を上げるためにフランス並みの国費を投入》、《戸籍制度を撤廃して事実婚を認め、婚外子比率を高める》の3つを提言している。ただ、日本財政の状況を考慮すれば、やはり移民に頼らざるをえない。シンガポールに倣い、労働者を管理しながら3年で帰るよう促せばいい。
先日も、ワタミの全幹部を前に、コロナウイルスの影響を受ける足元の景気状況、そして日本の経済財政の先行きを前に「このままでは潰れるぞ」と「危機感」を共有した。そこから「生き残り」や「成長」に知恵を絞り、来期の予算や戦略を話し合っていく。それが、一番大事な「会」の目的だ。普通の企業なら、これが当たり前だ。明細書の不備や、不適切な宿泊があれば経営戦略とは切り離し、調査や懲罰を行えばいい。
予算委員会も「本来の目的」を重視し、国民は「予算を話し合え」「未来を話し合え」と、正しく怒るべきだと思う。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より