中東情勢から波乱の幕開けを迎えたが、2020年の日本経済の見通しを年始、マスコミや中小企業経営者から多く質問された。経営者として「悲観的」に見て備える経営をするべきと答えている。一方、政府が昨年末出した、2020年度の経済見通しは、実質国内総生産(GDP)の成長率1・4%と、だいぶ「楽観的」に感じる。

各シンクタンクが出した試算から総合的にみて、私は「0・5%程度」の成長率ではないかと見込んでいる。国際通貨基金(IMF)のGDP予想も、0・5%増だった。

今年は、オリンピック後の景気の息切れや、消費税増税の支援策切れなどでマイナス成長予想でもおかしくないが、かろうじて、0・5%成長するといえるのはなぜか。

それは、19年補正予算と20年の予算を合わせた26兆円の経済対策が景気を押し上げるからであるが、「付け焼刃」的だ。個人消費も横ばいで、ほとんど成長しないとの見方もある。少子化で出生数は90万人を割り、高齢化は進み労働人口は減り、社会保障費は増える。国民誰もが納得する、「国の成長戦略」は描き切れていない。

アジアのGDPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の4・9%、インドの7・0%(IMFによる)成長が牽引(けんいん)し、ゆるやかな成長を遂げる。数字上、日本の成長率は独り負けの状況だ。

株価や為替レンジの質問もよく受けるが、今年は、ほとんど変わらないとみている。東証1部上場企業の約半数で、日銀が大株主になって買い支えており、ドルや円についても上下すれば政府が介入するだろう。あきらかな「官製相場」である。

株式相場本来の、企業の価値や未来を評価する株価になってないことに強く警鐘を鳴らす。10年スパンでみると、日経平均急落の可能性も十分ある。実体経済の鏡として、本来なら日経平均は下がっていておかしくない。しかし、日銀がそうさせない強力なカンフル剤を投与し続けている状態だ。強力な薬の副作用は必ずあると指摘したい。

しかし「悲観的」な中であっても、企業を成長させていく責任があり、ワタミも経営をゼロベースで見直し、成長戦略を描く。まずはマーケットが拡大する、高齢者向け宅配弁当の「ワタミの宅食」を主力事業と位置づけ、10年連続業界シェアNo・1の事業だからこそ、改善を続け、拡大を図る。さらに中国やアジア各国の海外事業を強化、担当役員も30代にし、未来シフトを敷く。国内ではインバウンドに力をいれる。中長期で考えると、農家の高齢化から農業は絶対有望だ。国内最大の有機農業「ワタミオーガニック」を将来の主力事業に見据え、基盤作りを急ぐ。外的要因が悲観的でも、こうして成長は描ける。基本中の基本は、インフレであれ、デフレであれ、お客さまの視点で「いい商品を安く売る」ことに限る。

ワタミは、日本経済の失われた30年で大きく成長してきた。「景気」や「政府」といった外的要因のせいにせず、成長させるのが「経営」だ。だからこそ政府が「楽観的」でも、常に「悲観的」に備えるべきである。

 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より