先日、「税収減の見込み」の報道もあったが、政府与党は「税調の季節」に入った。税率などの税制改正案は、自民党税制調査会の決定や答申によって、大方決まる。

自民党議員はこの時期、党本部に足しげく通い、税調の部屋は満杯になる。最も良い席は、党の政調部会長が占め、そのすぐそばの席は議員らで陣取り合戦になる。各部会や族議員らによって出された各税制改正案リストに、「〇」(受け入れる)、「△」(検討する)、「×」(お断り)などの印がつけられる。

「政策的な問題として検討する」という意味の「〇政」がつくと「インナー」と呼ばれる税調の少人数のベテラン議員が「密室」で最終決定を行う。ここで実質、税や予算が差配される。自民党内に民主主義でない部分があると、一経営者の目には見えた。

私は議員時代「法人税の引き下げ」を提言し続けた。世界の金融都市は時差ごとに1日で移動しており、ロンドン、ニューヨーク、そして「アジア」だ。そのアジア一枠を、シンガポールと香港と日本が争っていて、二都市を意識しなければ、日本がアジアの拠点になれないと主張した。日本の法人税も下がったが、シンガポールの17%を今後も意識すべきだ。

ほかにも、さまざまな税制改革案を提示してきた。一番は、赤字の会社にも法人税を課すべきという考えだ。赤字なら何も負担せずに済むのであれば、黒字に向けて努力しなくなる。政府は、景気が回復したというが、法人税収は微増にとどまっている。節税で経費を使い、赤字と黒字を繰り返す、中小企業の経営者も多いが、本来それでは会社は強くならない。

さらに、企業の役割は雇用だ。外形標準課税のとりわけ、従業員数に応じて算定される付加価値割の問題では、「100人雇う赤字の会社と、1人しか雇わない赤字の会社で、100人の方が税金が重くなるのはおかしい」と主張した。経営者を正しく導く税制度が必要だ。

歳入庁の創設も訴えた。現在、国税庁と社会保険庁で、税金と保険料が縦割りになっているため、徴収漏れがあったりする。サラリーマンは税金も社会保障費も天引きされる。不公平はなくすべきだ。歳入庁を創設し、マイナンバーで資産・収入を完全管理して、一括化すれば、税の徴収漏れなどが改善され、収入が10兆円以上増えるとの試算もある。

今臨時国会でも、与党から補正予算で「真水10兆円を出せ」との声が聞かれる。建設などの事業ではなく、景気回復のための純粋な支出だ。景気を考えての支出は理解するが財政的には死期を早めてしまう。

11月25日付の日本経済新聞(ウェブ版)によると、財政制度等審議会が「2025年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標の達成につなげていくべきだ」という建議を出した。この建議を私は100%支持したい。現政権にも任期後を見据え、財政黒字化への道筋を本気でつけてほしい。私も含め一定の資産や収入があれば、年金辞退の制度は当然だ。政治家にも「まずは自分から」の姿勢が重要だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より