世界一の投資家、ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」が初めて円建て社債を発行し、海外企業では過去最大となる約4300億円を調達した。これには大きな意味があると思う。

バークシャー氏は、円でお金を借りドルで外国企業に投資をする。社債償還時、円が高くなっていれば損をするので、円が安くなると見越していると考える。バフェット氏は、本当にいい企業と思えば一生、株を持ち続け、短期売買を否定する「長期視点」の投資家だ。その人物が、これだけ日本で借金をするということは、日本(円)を長期的にどう見ているかの指針だ。

私も議員時代から、長期で見れば円安やインフレになると主張してきた。

しかし、日本の投資家やエコノミストからは、この見通しと異なる意見が少なからず聞こえてくる。中長期的に円高ドル安になるとの考えだ。もちろん、通貨は「相対」だ。日本がいくら悪い状態でもドルも同程度に財政を緩めてきているので、円安にならないとの考えはあるだろう。

実際、米国では今年後半には減税効果がなくなり、2020年から景気が後退するという声も耳にする。しかし、アメリカと違い、日本は人口減少の大きな課題を抱えている。そして、日本の政治家にはその危機感がまったく希薄だ。世界的な投資家の行動は、日本への「警鐘」であり、もっとアンテナを立てるべきだ。
アンテナで言えば、野党もマスコミも「桜を見る会」を連日追及している。1日500~600億円も借金が増えている国で、森友・加計学園問題もしかりだったが、大きなお金の議論が行われない。

先頃、会計検査院が国費のムダを約1002億円指摘した。政府開発援助(ODA)で拠出したソロモンの給水設備が使われていないなど、税金のムダ遣いはもちろん問題だ。しかし、経営者目線で言うなら、大きな数字から攻めなければ、現実は変わらない。

理事長を務める郁文館夢学園では、中学3年から「お金科」という授業を設けている。5教科などの暗記よりもお金の方が人生に影響があると考え、お金科を始めた。金利や為替、株式、債券などについて年6回、1時間の講義を行う。保護者の方からも「現実的で、子供たちの幸せを考えている」という評判もいただく。お金に困らない人生を送ることも授業のテーマだ。

バフェット氏と並ぶ三大投資家の1人、ジム・ロジャース氏も昨秋、日本株をすべて売却した。世界的投資家の行動に「動きが出はじめている」印象を受ける。

与野党問わず、政治家にはバフェット氏が好む「長期視点」を大事にしてほしい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より