自民党の吉田博美前参院幹事長が亡くなられた。私が不出馬を決めた時、記者会見の前に、二人だけ相談した政治家のおひとりだった。「まだまだ活躍して欲しい」と慰留と激励を頂き、改革派の私にも懐の深い方だった。内容は、決して誰にも口外されず、口の堅い方でもあった。多くの人に慕われ、惜しまれる理由がわかる。心からご冥福をお祈り申しあげたい。

最近、経営者に復帰して思うのは、国会の中の様子が全然伝わってこないことだ。今、臨時国会でも、スキャンダル以外の内容がまったく伝わってこない。国会の内部にいると、スキャンダルが取り上げられている中でも、「これは重要な法案だから」とけじめをつける空気はあった。

議員ひとりひとり、国民のために今、どんな「政治」をしているか、まったくわからない。国民もそれを知りたいと思うべきで、マスコミには、各議員の政策提言をもっと報じて欲しい。

質問通告の内容が漏れた件が話題となったが、「漏らした」ことに注目が集まるが、質問通告の制度自体についても本質的に考えてほしい。大臣の質から、事前に質問内容を知り、官僚が答弁を用意しないと答えられない実情がある。しかしそれとは別の弊害も指摘しておく。

改革派であった私などは、委員会での質問内容が、事前に官僚や党に伝わり、族議員を介して、質問に注文がつくこともあった。折り合いをつけなければ、改革派の議員には質問の出番がまわってこない。党がコントロールできてしまう仕組みである。国会質問が、セレモニー化されていることまで問題として、国民やマスコミが、注視すべきであろう。

そのほかにも「国会はそもそもおかしい」と、改革提案してきた。効率面や経費面の問題はたくさんある。映像や音声があるにもかかわらず、速記を続けていることや、押しボタンがあるにもかかわらず、記名投票もおこなっている。さらに議員の特権、文書交通費などその最たるものである。JRのグリーン車乗り放題など、国民からは理解されない。民間企業と同じように、交通費を使った分だけ精算するのが当たり前である。

さらに経費も、確定申告同様、使用した経費を1円単位で、公開・申告するのが当然である。

公用車や議員宿舎など、与野党ともに、特権を手放すことには、消極的だ。私は、議員宿舎はもちろん、委員長職の時も公用車を辞退した。経営者として資産があるからだと指摘されたが、特権に興味のない人こそ、政治家に適していると反論したい。財政赤字の国だ。

国民の税金から来る特権を辞退する政治家こそ、本来、国を経営する姿勢だ。国会改革の究極の提言は、参議院不要の「一院制」と、派閥、業界団体の支持でなく、全国民の支持で選ばれる首相公選制である。大胆な改革案にも耳を傾ける、懐の深い政治家に期待したい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より