7日にワタミ会長復帰と新事業戦略の発表会見を開いた。目玉は、ワタミが農業テーマパークを建設することの表明だ。

震災から丸10年の2021年3月11日に岩手県陸前高田市にオープンする「ワタミオーガニックランド」は、東京ドーム約5個分の敷地面積で、地球の未来を考えた、完全循環型をコンセプトに掲げる。隣は、国立の復興記念公園だ。

世界中の人が足を運ぶこの場所で、本来、地球はこうあるべきという「持続可能な社会(SDGs)の理想モデル」を示したい。津波の後の場所での新たな土作りにはじまり、1次では、有機農業で育てる農作物に、ニワトリがいて牛がいる。2次では、卵も牛乳も、そこで加工し、3次では、レストランを運営し加工品販売をする。ランドの電力はすべて再生エネルギーでまかない、そこで出る生ゴミをまた土づくりに循環する。「6次産業+環境」のワタミモデルを形にする。

先日、国連で16歳の女の子が地球の未来を危惧し、こうスピーチした。

「生態系は破壊しつつあるのに、あなたたちが話すのはお金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話だけ」

痛烈な批判は、その通りである。世界中の大人や企業は、今、彼女の問いかけに、行動を迫られている。ワタミは、そのフロントランナーとなりたい。第二の創業は、このオーガニックランドをはじめ、SDGs経営を柱に据える。

会見では、労働環境の改善が進み「ホワイト基準」をクリアしている現状を報告し、今後もその「ホワイト路線」を堅持し「社員の幸せ」がいちばんだと断言した。その上で、適切な労働環境と企業収益の実現には、「外国人材の活用」と「圧倒な仕入れ力」が重要であると述べた。

外国人材の方は、傘下で、W&Iドリームモデルという外国人材の育成支援事業会社を展開、2022年には1000人の外国人材の日本での活躍を目指す。もちろん単純労働と位置づけず帰国後の起業支援など独自の夢支援のモデルを作る。

仕入れ力の方では、鹿児島の和牛畜産最大手の「カミチクグループ」と資本業務提携を行い、新業態を開発する。国内はもちろん「和牛のクールジャパン」として、中国市場、世界市場も視野に入れる。

10年後の2029年は、現在の倍の2000億円という売り上げ目標を掲げた。足元は、ワタミの宅食を主力事業と位置づけ、健康なお弁当を手渡しで見守りながら届けるという、高齢者インフラの使命を果たし、確実な成長を遂げていく。外食事業は、定年後の人材活用をはじめ、フランチャイズオーナーの中小企業経営者を1000人支援育成し、新たな外食経営のモデルを確立していく。

農業、再生エネルギー、地方創生、中小企業支援、すべて国政で改革提言してきたことだ。これからは「経営モデル」でそれを形にしていく。

振り返れば都知事選に落選した後、陸前高田市参与に就任した。人生すべてに意味があったと思い、60歳から人生最大の夢に挑戦したい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より