1日付でワタミの代表取締役会長兼グループCEOに就任した。くしくも消費税増税の日と重なり、緊張感を覚えている。増税のタイミングや軽減税率の仕組みなど、評価を問われたら、今回の増税は「0点」だ。

私は消費税を25%まで上げることを主張しており増税には賛成だ。財政を考え、増税をする国だという事実を、国際社会にアピールすることは、国債の信任へも大きな意味もある。

ただ、上げるべきタイミングは最悪だ。いかにうまく増税するかは政治の手腕だが、前回2014年の5%から8%への増税時は、日銀による異次元の金融緩和が有効に働き、金利を下げることができた。消費も堅調だった。

しかし、最近は景況感も停滞し、日銀のカードも少ない。マネタリーベースの増加ペースも落ちてきており、国債の金利もマイナスの状態だ。もしできるとすれば、日銀自ら日本株に投資する上場投資信託(ETF)の購入額を増やすしかないが、批判も多く、リスクをともなうことも間違いない。

税金は「公平・中立・簡素」を三原則とするが、軽減税率は、どれにもあてはまらない。

テークアウト(持ち帰り)8%でイートイン(店内飲食)10%というくくりも紛らわしい。ワタミグループも、「から揚げの天才」などテークアウト業態を展開しており、お客さまを複雑にさせない対応に迫られた。政治や官僚は、こうした「経営の現場」「消費の現場」を想像しているのだろうか。

増税後、あらゆる景気対策を政府は講じるが、ある調査では、増税で、10兆円前後の消費が減衰するとの試算もあるほどだ。理解しづらい税制は、いくら軽減税率を実施しても効果は見込めない。そもそも、経済が元気になるような体力づくりが必要だった。増税後に胃薬を飲ませるような「手当て」に見えてならない。

もちろん、外食業界もあおりを免れない。実際に外で食べる消費者が減ることは予想される。ただ、外食には、魅力がある。恩人の「つぼ八」創業者の故・石井誠二さんは私にこう言った。「居酒屋は人を元気にする場所」。その教えから、ワタミの理念を「ひとりでも多くのお客さまにあらゆる出会いとふれあいの場とやすらぎの空間を提供すること」とした。

6年ぶりの本格経営復帰の日が、増税。日本経済の先行きは相当きびしい…。しかし、復帰の記者会見では、それを乗り切る「新規事業」と「新事業戦略」を発表したい。現実を変えられず、政治家として自分を0点だったと評価した。文字通り「0」からの出発であり現実を変えていきたい。

しかし、24歳で初めて自分の店(つぼ八高円寺北口店)を持ったときと同じぐらい、わくわくしている。「日本経済の先行きより、君の夢はなんだ…」、石井さんならきっと私にそう問うだろう。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より