米国西海岸で、外食と流通、小売りの現場を視察してきた。感じたのは「変化した企業」と「変化に乗り遅れた企業」の差が顕著だったことだ。

改めて、ネット通販大手「アマゾン」は、世界中の経営者が意識すべき存在だと感じた。そんな中でも、世界最大のスーパーマーケット「ウォルマート」は健闘していた。

新店舗には約310億円しか使わない一方、IT・物流部門には17倍の約5200億円もの投資をしているという。アマゾンが翌日配達ならウォルマートは当日需要を意識していた。スマートフォンなどで事前に注文し、店が商品を準備し、よりはやく便利に受け取れる「ならでは」の戦略がみられた。

外食でも、変化は顕著だった。マクドナルドの研修施設「ハンバーガー大学」のモデル店に行くと、IT化が進んでいた。オーダーも徹底したセルフだった。しかし、あえて必ず店員が、笑顔で商品を運んでくれる仕組みだった。「人と人との接点は残す」という理念だという。生産効率を上げながらも「人がすべき仕事も、大切にする。」その戦略に賛同だ。

一方で、変化に乗り遅れた企業もあった。かつて米国ナンバーワンのカジュアルレストランだったあるブランドの、ロサンゼルスの店では、「14ドル(約1490円)で4品好きなだけ」という、安売りを展開していた。憧れのブランドでもあり、その「迷走」を残念に感じた。さらに、シカゴの店では、18%のチップを会計に加え、更にチップを要求してきた。チップなしの「ファストカジュアル」のライバルが伸びてきている中、「変化に乗り遅れている」象徴のような事例だった。

小売りも例えば、アマゾン傘下となった、オーガニックスーパー「ホールフーズ・マーケット」の場合、ナチュラル&オーガニックに特化して人気を上げた。しかし「あらゆる角度からの安心安全」と、「求めやすい価格で」という競争は激化しており競合店も増えた。この消費者ニーズの流れは、アメリカから日本へと進むであろう。「オーガニックだから高くていい」は必ず変化が求められる。日本最大級の有機農場、ワタミファームを中心とした「ワタミオーガニック」は、今後最大の「ならでは」としたい。

人物の評価は別とし、経営者であるトランプ大統領、今の米国経済の好調さを感じた。経営者の決断は「はやい」。オーナー経営者の決断は「さらにはやい」。日本の官僚体質の「遅さ」には、議員時代に不満が多かった。「変化に乗り遅れた企業」は衰退する。それは「変化に乗り遅れた国」も同じだ。

マクドナルド兄弟の店を世界最大のチェーンにしたレイ・クロックというファウンダーがいる。

兄弟の店は素晴らしかった。兄弟は変化を嫌った。しかし、この男が変化させたから今がある。

私は大学生の時の、世界一周旅行から、帰りの飛行機で「夢」を決心することが多い。

その昔は「外食産業で起業する」と手帳にメモした。今回の帰りの飛行機ではこうメモした。「アマゾンに、出来ないことをする」。この一行から、かなり大きな夢へとつなげたい。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より