私は、黒田バズーカには必ず「副作用」があると思っている。議員時代、委員会質疑をはじめ、何度も日銀を取り上げ、質問を行ってきた。

 直接、黒田東彦(はるひこ)総裁への回答を求めたが、日銀側は理事クラスが出てくるだけで、一度も本人から納得のいく回答がなかった。なのでこの場で、黒田総裁への「公開質問状」という形で、その問題提起をしたい。

 アベノミクスの1本目の矢である「大胆な金融緩和」について、私は3本目の矢である「規制緩和」による経済成長の実現とセットだと当然思っていたし、だから賛成だった。

 しかし、規制緩和は、既得権と業界票で、なかなか実現されない。内閣府によると、名目GDP成長率は2020年以降で3・0%以上を想定しているが、ここ数年の実績を見る限り、楽観的すぎる数字だ。

 「黒田総裁だって、経済成長率の見通しが甘いと、本当は思っているのではないか」。さらに「黒田総裁も本来もっと規制緩和による経済成長を実現してくれと怒っているのではないか」をまず聞きたい。

 そして、最悪のシナリオについても聞きたい。日銀は2019年7月末時点で、約480兆円規模の国債を保有している。17年発行分だと、「75%」の国債を日銀が保有している状況だ。

 そもそも、このまま、日銀が一生国債を買い続けるのか。日銀が買いを控え、国債の買い手が付かなくなった場合、海外をはじめとする買い手は、この金利では買わず、金利が上がることになる、その金利負担で、国家財政がひっ迫し、財政破綻の危機もある。「黒田総裁は、国債の金利上昇の最悪シナリオをどう思っているのか」ぜひ、聞きたい。

 さらに、日銀が上場企業の大株主になっている現状についてだ。4月16日の日経新聞によると、日銀は日本株に投資する上場投資信託(ETF)を年間約6兆円購入しており、ファナック、オムロンなど23社で筆頭株主になり、なんと上場企業の49・7%と半数で日銀が大株主(上位10位内)となっている。

 本来株価は、その企業価値と、将来性で決まるものなのに、日銀がどんどん株を買う、これは異常すぎる。しかし、もうここまで来ると、日銀が大量の株式購入をやめてしまえば、日経平均の下げ材料につながる。さらに、日銀がその株を売るとなると、日経平均は暴落する。「日銀は、株を一生買い続けるのか、一生持ち続けるのか。黒田総裁は、出口戦略を考える時期ではないと繰り返すが、正しくは、出口戦略はないのではないか」本心を聞きたい。

 自民党財政金融部会長代理の時、日銀の出口戦略についてプロジェクトチームを組んで議論したいと提案したが、実現は難しかった。

 まず、黒田総裁が本心と真実を明らかにし、次に国民が「仕方がない」と理解を示し、「規制緩和、歳出削減、増税」といった本来、政治家が票を失うからと嫌がることをする、国挙げての「体質改善」しかないと、私は思う。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より