ワタミ取締役ファウンダーの「最初の仕事」として先月29日、ワタミがテリー伊藤さんと組む「から揚げの天才」矢口渡店のオープニングセレモニーに出席した。

 開店時200人の行列、初日760人のご来店と大盛況の立ち上がりとなった。実はこのお店は、私が国政で提言し続けてきた中小企業支援の思いを形にしたものでもある。ニッポン放送で共演するテリーさんに「経営を教えてほしい」とある時、本気で言われた。

 そこから約1年、渡邉美樹実践経営塾(渡美塾)のフォーマットをベースに、経営塾の個人レッスンをした。最初は、企業理念の大切さにはじまり、競合との差別化をはじめとするマーケット戦略、そして中期経営計画と言った事業戦略まで、一緒につめた。

 日本の約99・7%が中小企業である。「中小企業が元気になれば、日本経済は元気になる。」これは私のスローガンだった。ある中小企業支援制度の相談窓口では相談の9割が「どうしたら、売り上げを伸ばすことができるか」にも変わらず、そのニーズには応えきれず、中小企業の業績は大幅改善してこない。であるならば、その仕組みを改革するのが政治の使命である。そこで私なりの「大改革」を提言した。その柱が、縦割りに無数にある、中小企業支援制度を5つに整理統合する案だ。

 (1)新商工会(市町村単位に1つ。かかりつけ医の役割)(2)よろず支援拠点(都道府県単位に一つ。総合医の役割。難易度の高い支援や市町村をまたぐM&Aなどを担当)(3)中小企業大学校(新商工会、よろず支援拠点の経営指導員を育成)(4)JETRO(海外展開をサポート)(5)信用保証協会(金融機関と連携して資金面でサポート)。

 しかし、今までの政策を否定されると困る官僚に反対され、さらに「商工会議所・商工会票」を背景とする族議員にも猛反対された。経産大臣に「今の政策でなぜ、中小企業の黒字が増えないのですか」と核心をついた質問もしたが、「今の政策を行っていなければ、もっと赤字が増えていた」との回答だった。

 官僚は優秀だが、経営者目線ではない。国は経営理念や差別化の大事さより、補助金政策に力を入れる。その結果、赤字の「ゾンビ企業」も深刻化している。テリーさんには理念や差別化を口うるさくアドバイスした。たどり着いた理念は「笑顔がみたい」だった。

 さらに「差別化」への答えは、ワタミ35年のから揚げのノウハウと、実家が玉子焼き屋さんのテリーさんのノウハウで「から揚げと玉子焼き」の専門店とした。1個99円の大きなから揚げと、テリーさんこだわりの、2カット180円の玉子焼きは人を笑顔にし、他にはない差別化がある。中期戦略の「全国300店舗」の実現のため、この「から揚げの天才」をフランチャイズ化する、そのために少額資本・簡素化で、起業しやすいモデル作りを意識した。年金2000万円問題の解決策はいまだ示されていないが、私は定年後、元気な方には、ぜひ起業してほしいと思う。

 カーネルサンダースは65歳でケンタッキーフライドチキンを創業した。同じ60代のテリーさんには令和のカーネルサンダースとして、その象徴になってほしい。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より