国会の中で数少ない「方向性が同じ」政治家がいた。それが、タリーズコーヒージャパンの創業者で、元参院議員の松田公太さんだ。先日ニッポン放送で対談した。

 松田さんは、2010年の参院選にみんなの党から出馬しその後、日本を元気にする会代表などをつとめたが、私と同じ1期6年で自ら議員バッジを外した。「先生」と呼ぶ政治の慣習にとらわれず、国会でも「松田くん」「美樹さん」と呼び合う関係だった。

 松田さんは現在、パンケーキブームの火付け役となった「Eggs‘n Things」をはじめとする外食事業の経営の一方、バイオマスの自然エネルギーを使った熱供給事業も手掛けているという。ワタミも、大分県臼杵市でバイオマスの発電事業に取り組み、再生可能エネルギー100%を目指す「RE100」を宣言している。

 共に、参院経産委員会をはじめとする場で、原発ありきの大手電力会社の日本のエネルギー政策に、経営者目線の批判提言をしてきた。

 松田さんが「現在は、政治ではなく、経営で現実を変えようと思っている」と語り、私も「全く同じ気持ちだ」と答えた。番組のメーンテーマは今回の参院選だった。自民党への支持について、私が「国民の現状肯定意識」を心配するコメントをすると、松田さんは「国民はそんなに危機感を覚えていなかったと思う。生活に多少の不満を持つ人はいても(生活水準が)『中流』の範囲で、我慢できる程度に留まっている。『民主党政権より今の方がましだ』ということなのではないか」と語った。

 私たちの外食業界で例えると、大手のブランドには安心感がある。ハンバーガーで言えばマクドナルド、コーヒーで言えばスターバックス、政党で言えば自民党というように、結局、「他よりなんとなく安心」と言うのは大きい。野党の伸び悩みについて私は、「例えば、長い目でみて、具体的な財政再建を打ち出している党はどこもなかった」と指摘。松田さんは、選挙戦で「規制改革の話が出なかったこと」が残念だという。

 私も当初、アベノミクスの3本目の矢「成長戦略」に掲げられた「民間投資を喚起する規制緩和」を推進するため政界に進出しただけに、強く共感する。松田さんは「もし、自分が首相になったら、規制緩和に本気で取り組みたい。日本が生き残るには、規制を取り払って、ベンチャー企業をどんどん輩出していくしかない」と提言していた。

 私は「財政再建に向き合い、時に国民の耳に痛い政策を掲げながらも、国民に『自分たちのことを考えてくれている』と理解してもらえるような政党に現れてほしい」と訴え、対談を終えた。政治家は、予算獲得までに必死になる。経営者は、その予算をどう有効に使うかに必死になる。

 政治家は、次の選挙という短い目を気にする。創業経営者は、長い目でみて持続可能な経営を意識する。松田さんが帰り際、「経営者50人ぐらいで新党を作ったらおもしろいと思いませんか」と言った。経営に復帰したばかりで、私は返事を控えたが、「方向性は同じ」だ。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より