参院議員の任期を終え、経営者に復帰した。参院外交防衛委員長も退任となったが「冷遇」と報じられた、韓国議員団との面会の真実だけ、国益を願い、きちんと記しておきたい。

 徴用工訴訟問題や、韓国海軍駆逐艦によるレーダー照射問題などを受けて、日韓関係が最悪といわれる中、今年5月、韓国の国会議員団5人との面談の依頼が、在日韓国大使館を通じて、参院外交防衛委員長の私にあった。徴用工訴訟をめぐっては、日韓請求権協定で、日本は当時の韓国の国家予算規模をはるかに超える5億ドルの無償・有償援助を提供した。これで日韓の賠償請求権問題は「完全かつ最終的に解決」している。

 さらに、協定に齟齬が生じた場合は、第三国に、「仲裁」を依頼する取り決めであり、米国など第三国を入れた、仲裁委員会の設置がこの問題の解決のたったひとつの方法である。

 「双方が対立しているなら、第三者を入れて議論しましょう、正当だと真に主張するなら、第三国を入れるべき」が、私がその時、一貫して主張したことである。外交であり一字一句公にするつもりはないが、韓国議員団は、「厳しく受け止めて判断しないといけない」という趣旨を述べている。

 日本と韓国の未来につながるきっかけを探った会談を、翌日(5月29日)の中央日報(日本語版)は、「『合わせて20選』韓国議員5人を日本は初当選議員1人が相手『このような冷遇初めて』」と、信じられない見出しで報じた。そもそも、当選回数を合算して、面談を評価する理論が、理解できない。会談の趣旨より、韓国国内の世論「ウケ」を目的に韓国メディアが報じた印象を持ち、残念である。国と国の約束「協定」に反する判決が出されたら、日本企業は韓国に進出しなくなるであろう。

 日本政府は今月初め、韓国向け半導体素材の輸出管理を強化した。来月にも輸出管理上の優遇国「ホワイト国」から外す予定だ。経済規模から考えれば、韓国の方が不利に働くだろう。韓国のグローバル企業の経営者に聞くと「日韓の対立は、感情の問題」と、経営者目線では「合理的でない」ことに当然気がついている。

 しかし、韓国の政治は「反日」のポピリュズムが強い。「反日」の政治家を韓国国民が選び、その結果、韓国経済が落ち込むことにつながる。韓国の「経営者目線」の政治家に期待したい。

 実は私は議員当選後すぐ、ソウルで、韓国の政府高官と日韓請求権協定の件で、意見交換をした。その際は「その質問は今日のテーマではない」と門前払いを繰り返され、会談場所のホテルの会議室の費用まで、こちらで負担させられた。しかし、私は「あれこそ冷遇」だと批判することはしない。日本には国技相撲になぞらえ「同じ土俵にのらない」という言葉がある。秋にソウルに行く予定をいれた。

 経営者として、韓国の実情にふれ、日韓経済について、改めて指摘、提言をしたい。経営の世界には、「何期当選」という考えはない。ビジネスでフェアに世界と戦っていきたい。


【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より