21日に参院選が投開票された。選挙結果は、私の予想や感覚と違った。有権者は「現状のままでいい」という選択をした形だ。自民、公明の与党は71議席で、非改選も合わせた全体で過半数を獲得した。各党の特徴が明確に現れないなか、「入れる候補や政党がない」という消極的支持も多かった気がする。野党は全体的に低調だった。立憲民主党は17議席と、改選前9議席より8議席増やしたが、「反自民」票が集まっただけで、積極的支持とは思えなかった。「老後資金2000万円」問題で年金制度への不安が広がったが、有権者の意識を政治に向けさせることが不十分だったと思う。

 私が憂慮するのは、「現状維持」に甘んじる感覚だ。日本は、国の借金が1100兆円を超えるなど、国家財政に問題を抱えている。少子高齢化が進むなか、社会保障の財源も深刻だ。自公与党の勝利で消費税は10月に上がるが、2兆円規模の景気対策も決まっており、財政規律の早期改善は期待できない。米中貿易戦争もあり、日本経済の先行きも曇り空のままである。

 私は特に、若者たちの「現状肯定」が心配だ。日経新聞が今月上旬に行った世論調査では、20代の若者の約7割が安倍政権を支持していた。政治体制がまったく違うが、香港の若者たちのように、社会の矛盾や、政治の停滞に危機感や怒りを抱いているように見えない。積極的に「自分たちの未来を切り開きたい」「現状を変えたい」という挑戦や意欲を若者にはもっと、もってほしい。

 業界団体の推薦を一切受けなかった私は、これまで無党派層や、国民全体に向けた提言をしてきた。政治への関心を高め、投票率をあげる政策提言もしてきた。今回も投票率は48・8%で、戦後2番目の低さだった。無党派層や、投票に行かなかった人が本気で動けば、この国は大きく変わると思う。

 海外には、投票を棄権した場合、罰金(オーストラリア)や、次回以降に投票できない(シンガポール、タイ)など、義務投票制を設けている国もある。私もこのような仕組みを導入すべきと大胆提言をしてきた。

 現実的な投票率の改革としては、駅やコンビニなど若者が多く利用する場所や、インターネット投票を解禁すべきと提言してきたが、政治は動かなかった。投票率を上げたくないという思惑は、特定の支持母体や特定の業界団体といった「既得権層」の発想だ。

 「特定」ではなく、国民「全体」を考える「全体最適」の政治家が、今回の選挙でも何人当選したのかしっかり注視していきたい。任期の上では日曜日まで自民党参院議員である。自民党の中で、自由に発言をしてきた。

 最後に、選挙期間中の安倍総理の「今後10年間は、消費税をあげる必要はないと思う」という発言には、財政破綻が心配であり「反対です」と、ここで意見し、議員バッジを外したい。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より