今回は、国会議員としての「反省」を振り返りたい。昨年7月、参院本会議で改正公職選挙法、いわゆる「6増法案」が可決した。正直「乱暴な法案だ」と思った。国が、約1100兆円もの借金を抱えるなか、なぜ議員の数を増やすのか。改正法では、1票の格差を是正するため、議員1人あたりの人口が最も多い埼玉選挙区で定数を6から8に増やし、比例代表は96から100にした。総定数は242から248になった。比例代表には「特定枠」を設け、各党が決めた順位で当選者が決まる拘束名簿式を一部に導入した。

 自民党は特定枠の新設で、隣接県を1つの選挙区にした「徳島・高知」「鳥取・島根」から出馬できない候補者を救済するという。しかし、7割弱の国民が批判している世論調査の通り、やはりおかしい。「6増法案」の採決にはもちろん党議拘束がかかっていたが、投票寸前まで悩んだ。6年前の参院選で、逆風下でも、10万人以上が私に投票し、期待してくれた。私らしさを貫くべきか、党議に反することで、それ以外の政策実現で、私らしさの機会を失うかの選択であった。

 私はこれまでも、経営者目線から、現行の選挙制度や議会制度にモノ申してきた。

 まず、衆院の小選挙区制はやめた方がいい。1選挙区1人では公認権を持つ党に力が集中し、党議拘束も強まり、政治家の個性が失われる。党内で反対意見を持つ候補者がいなくなってしまう。

 参院は「衆院のカーボンコピー」であるなら「不要論」が指摘されても仕方ない。参院としての独自性を示せず、衆院の決定を是認するだけなら、存在意義はない。

 参院は「良識の府」として機能を発揮しなければならない。選挙制度も衆院とは大きく変えてはどうか。かつての貴族院のようなかたちで有識者を集め、拒否権を持たせて活動してもいい。

 私はかつて「首相公選制」を主張していたが、国会議員経験を経て、一概に是ともいえなくなった。

 ただ、都知事選出馬の経験から、地方自治体の二元代表制は正しいと思っている。首長と議会が、住民の直接選挙でそれぞれ選ばれることで、首長がリーダーシップをとりながら、議会を意識した緊張感のある政治ができる。ワンマン経営者がいながら、ガバナンス(組織統治)の効いた企業に似ている。

 「6増法案」への批判措置として、増えた分の歳費を自主返納する法案が成立した。しかし自主だけに返納しなくてもよく、またその期間も3年に限ると甘い。私は国会で財政再建を主軸に取り組んできたが、議員歳費や議席削減にメスを入れずに、国民負担にメスを入れる再建は難しいと感じる。「6増法案」の採決の時、不本意に苦しみ、賛成の投票ボタンを押す手が、自然と一瞬ふるえた。年金だけでは、老後の生活費が足りないという議論の国で、国会議員の数を増やした事実は、やはり反省である。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より