先日、参院議員の任期満了後、ワタミに復帰する意向を明らかにした。ひとつひとつの法案が、議員としての締めくくりとなる。

 環境に関して、いわゆる「食品ロス削減法案」が24日、参院本会議で可決した。処分される食品の削減を目的に、「食品ロス削減月間」設置や、功労者への表彰などを定めている。ただ、経営者目線でみるとナンセンスで、これだけでは食品ロス削減は不可能だと考えている。

 私は以前から、食品ロスをめぐり、「ゴミ袋のより高額な有料化」や「賞味期限・消費期限の併記」を主張してきた。外食産業の食品の処分も、自治体が安価で処分する一般ゴミではなく、「産業廃棄物にして、自ら工夫してリサイクルさせるべきだ」と提言してきた。

 しかし「賞味期限・消費期限の併記」の提言などは、食品ロス削減の号令に反し、官僚から反対された。この分野は、票になりにくく、一方で「業界からの批判」も予想され、熱心な政治家が多くはない。政府として、食品ロスの目標を掲げて号令をかけても、筋道を描いていないのは問題だ。

 ワタミは2010年、環境省に“エコファースト”企業として認定され、私自身も20年間にわたって環境問題に取り組んできた。国際的な環境規格「ISO14001」の認証を受け、リサイクルセンターを設置し、二酸化炭素(CO2)削減環境宣言などを実行してきた。実際のところ、民間企業が環境活動で黒字を出すことは難しい。例えば、ISO取得の初回認証時で、当時3500万円が必要だった。その時は、年間約5000万円の水道・光熱費の削減ができた。しかし認証の維持・更新に、当初ほどの削減幅がないのに、再び大きな費用がかかった。費用対効果が明確でなければ長続きしない。「環境」と「経営」を、どう両立させるかが勝負になると思う。

 それでも、私はISOを取得しようと考えた理由がある。それは、企業として取り組むことで、数万人規模で、従業員・アルバイトの環境への意識が変わることである。あるアルバイトから「空き缶を捨てられなくなりました」との言葉を聞き、私は「これだ」と思った。

 世界的にプラスチックゴミが注目される中、ワタミの宅食部門は最近、業界初の大方針を発表した。

 それは、お弁当箱を完全リサイクルすること。まずは愛知県下で、バイオマス素材を含んだ容器に変更し、それを回収し、リサイクルする取り組みを開始した。お弁当のお届けスタッフは容器を回収し、お客さまには容器を洗う負担をお願いする。経費もかかる経営判断だ。それでも環境のために皆が少しずつ理解と負担をする。

 しかし、本来その啓蒙(けいもう)は、政治の仕事である。持続可能な社会作り、とくに環境などの分野においては、政治で実現できなかった理想を経営で再び挑戦したいと思う。

 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より