私は郁文館夢学園(東京都文京区)の理事長として長年学校経営をしている。新時代「令和」最初の連載は、その経験から「新時代の教育ビジョン」を見据えたい。

私は「人が成長するのは素敵だ」という気持ちから教育に関心を持ち、24歳の1月1日の日記に「塾を1つ作る」と書いた。のちに目標を塾から学校に変えた。ワタミが東証1部に上場した2000年、いよいよ学校経営に向けて動いた。しかし、現実的に私立学園の新規参入は難しかった。

そんななか03年、経営状況が良くなかった郁文館学園(当時)と出合い経営を引き継ぎ、再建した。後に学校名も「郁文館夢学園」とし、1年間の留学課程のある郁文館グローバル高校も新設した。

日本の教育は、「暗記して何点とるか」など記憶力で優劣を競っている。ただ、AIの時代が到来し、重要なのは「想像力」や「問題解決のシナリオを描ける能力」だと考えている。他にも、思いやりや優しさなど、人間力が求められるようになる。

暗記教育に対して、「未来の教育」として始めたのが“夢教育”だった。今の子供たちは豊かで夢を持つことをしない傾向がある。社会に関心を持ち、自分の夢を持たせることを最重要視している。

郁文館夢学園では、夢をかなえた各界の一流の人をロールモデルとして招く「夢達人ライブ」を実施し、「夢手帳」という、夢達成に日付を入れ、そこから逆算し今日すべきことを計画化する生徒手帳を使い、校歌は「君の夢がかないますように」と、とにかく夢を意識させている。将来の夢は、起業家や上場企業の経営者という生徒には、日本ではじめて高校生版MBAまで実施している。夢教育で、成績を伸ばし、東大に進学していく生徒もいれば、一方で、陸上で五輪に出場した生徒もいる。

私の考えた学園のスローガンは「25歳人生の主人公として輝いている人材を育てます」。高卒の18歳、大卒の22歳前後に節目を置く一般的な考えと、ゴールの置き方が違っている。大事なことはその先の人生のスタートラインである。

そうした学校経営をしている中、06年、第1次安倍内閣の教育再生会議のメンバーに選ばれた。私はまず、高校卒業試験の設置を訴えた。大学全入時代、経営のため、名前さえ書けば入学させる大学もあるという。「大学にいくのが当たり前」との考えは変えないといけない。

次に、教育専用のバウチャー(引換券、金券)を支給し、自由に公立・私立を選択させればいいと、バウチャー制度を訴えた。親もバウチャーを支払うにあたり、教育をより意識し、学校側も公立・私立問わず競争する努力も生まれる。

近年の動きで大きかったのは、センター試験が変わったことだ。試験が変われば、教育も変わると私も思う。少子化が進む中、従来の「大学に行くのが当たり前」という考え方では国力を増強できない。新時代に即した教育にしなければいけない。

今では、郁文館グローバル高校を卒業した生徒が、日本でなく海外の大学に進学している。塾を1つ作りたいと書いた私の夢もだいぶ大きく育っている。

 

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より