GDP600兆円の達成には、地方の中小企業が元気になることが必要不可欠です。しかし、中小企業・小規模事業者数は1986年の533万者から現在は385万者に減り、中小企業の1社当たり平均売上高も1980年比で約半減しています。中小企業は長期にわたって衰退しているのです。これまで、多くの様々な中小企業支援政策が実行されてきましたが、衰退の流れを止めるには至っていません。
中小企業を元気にするためには、中小企業支援組織が最大のパフォーマンスを発揮できるような体制でなければなりません。しかし、『行政事業レビュー』で外部有識者も指摘している通り、各中小企業支援機関は役割が重複しており、十分なパフォーマンスを発揮できていません。
この点について、行政監視委員会にて質問しました。

中小企業や小規模事業者の支援組織としては現在、都道府県や市町村の産業振興部門、関係省庁とその出先機関、中小企業基盤整備機構、JETRO、よろず支援拠点、認定支援機関、創業ワンストップ支援体制、中小企業再生支援協議会、事業引継ぎセンター、中小企業支援センター、商工会議所、商工会、金融機関など、非常に多岐に渡ります。
それらは必ずしも、役割分担が明確になっているわけではありません。例えば、列挙した支援組織の中で、中小企業の海外展開支援を行っている支援組織は多数あります。
このような支援組織の多さが『行政監視委員会報告(3)誰が責任を取るのか?』で指摘した「責任の所在が不明確」という問題にもつながっており、結果として、事業予算の重複、人件費の重複、人材の重複、どこに相談してよいかわからない中小企業側の混乱とそれによる機会ロスなど、様々なロスを生んでいます。

ドラッカー氏は組織について次のように述べています。
「組織は明快でなければならない。組織マニュアルの助けなしでは、自らの所属や行くべきところ、あるいは自らの位置がわからない組織構造は、無用の摩擦、時間の浪費、論争や不満、意思決定の遅れをもたらす。そのような組織構造は、成果をあげる助けとなるどころか障害となる。そして、組織構造の経済性は、明快さと密接な関係にある。」

今の中小企業支援組織、支援体制は明らかに明快ではありません。結果として、経済的にも非効率になっています。

私は現在、クールジャパン推進のプロジェクトにも携わっておりますが、地方をヒアリングしたところ、市役所も商工会も観光物産協会も企業も誰もクールジャパン政策を一つも知りませんでした。これは、政策の周知が足りないという問題ではありません。組織体制が複雑で責任が不明確であるがゆえに生じている問題です。

最後に、「中小企業支援の体制を抜本的に見直すべき」「まずは一つの市町村で、ゼロベースで中小企業支援体制のモデルをつくり、その成功モデルを全国の各地域・自治体に横展開するべき」という意見を述べさせていただき、行政監視委員会の質疑を終了しました。