消費税率を予定通り8%から10%に引き上げるべきかどうか、様々な意見が聞こえてきます。
1%刻みで引き上げるという案も出てきました。
むしろ下げるべきだとの意見も聞こえてきます。
経営者として30年以上、経済の現場にいた立場から言わせていただくと、私は消費税率を予定通り10%に引き上げるべきだと考えます。
理由は「予定通り引き上げないことに対するマイナスのリスク」があまりにも大きいからです。

私は海外の投資家や経営者の友人が多いのですが、彼らが一様に心配しているのは「日本は財政再建を本気でやろうとしているのか?」ということです。
安倍首相はかねてより「東日本大震災やリーマンショック並みの経済危機が起きない限り、予定通り消費税を引き上げる」と表明されています。熊本地震への対応に全力を尽くすことは大前提として、海外からの信用を守るために「消費税率を10%に引き上げる」という約束を予定通り実行するべきです。

今は日銀が国債を買い続けているので、日本の国債は買いが集中して価格が高騰し、金利はマイナスになっています。しかし、日銀が今のペースで国債を買い続けるのは、あと2~3年が限界だと言われています。なぜなら、日銀の営業毎旬報告(平成28年4月10日現在)によると、日銀が保有している国債は353兆円です。中央銀行が自国の国債を保有できるのはGDPと同程度までが限界という説があり、今のペースで買い増しを続ければ、日銀保有の国債はあと2~3年でGDPに匹敵する額になってしまうのです。

このままではいずれ国債価格は下落して、国債金利が上昇してしまうリスクがあります。
国債金利が上昇すれば、日本の財政に深刻な打撃を与えます。
国債を保有する金融機関のバランスシートも毀損して信用力が低下し、貸し渋り、貸し剥がし等が起き、企業や家計は深刻な事態となります。
さらに、政府財政への信用低下が進めば、金利上昇に留まらず、政府の資金調達自体が困難になります。
消費税率を引き上げないことに対する「マイナスのリスク」はあまりにも大きいのです。

私は、消費税を予定通り引き上げて海外からの日本財政への信用を保ちつつ、大型の補正予算を組むことで医療・介護といった社会保障への対応、TPP対応、中小企業対応、地方創生に力を入れ、「消費税を上げてもこの国は大丈夫だ!景気は良くなっていく!」というメッセージをどれだけ発信できるかが大切だと考えます。