理事を務めさせていただいている参議院の『国の統治機構に関する調査会』。先日の議題は「二院制議会における今日の参議院の役割(立法及び行政監視の活性化への視点)」です。

昨今、「参議院は衆議院のカーボンコピーではないか?」という批判の声が高まっています。選挙制度も含めて、衆議院と参議院の役割の違いは明確ではありません。今のままでは、参議院はその存在意義を問われかねません。

私は、選択肢は二つしかないと考えています。
選択肢①:参議院を廃止し、一院制に移行する。
選択肢②:参議院の役割を行政監視や決算といった機能に特化する。

しかし、選択肢①は憲法改正が必要であり、憲法改正には参議院での3分の2以上の賛成が必要となります。それは参議院議員が自らを否定することであり、現実的には難しいと思われます。それであれば、参議院は衆議院のような与野党対決色を薄め、行政監視や決算などの機能に徹する選択肢②が現実的、かつ望ましい姿だと考えます。

 例えば、元企業経営者の視点から言わせてもらうと、国の決算の仕組みはあきらかに問題があります。上場企業であれば、月次決算や予算管理という仕組みの中で、予算項目ごとに費用対効果や妥当性を検証し、その結果を踏まえて次年度の予算を編成します。しかし、この国の決算と予算編成はそのようになっておりません。前年度の検証が十分に行われていないことが、結果として多くの政治家や官僚に「税金を使わせてもらっている」「1円も無駄にしない」という感覚が欠如している原因の一つだと考えます。

 この点について、参考人としてご出席いただいた憲法学者の先生に聞いてみました。
「電子化等の技術が進んでいるこの時代に、日本は紙ベースで決算している。一方、海外では、決算の仕組みを電子化し、四半期ごとに決算している国も増えてきている。日本はどこから手を付けて良いかわからないから明治以来のやり方をいまだにやっている。アメリカでは10年以上かけて、決算システムを転換した。政治も行政も民間企業から学ぶべきところはたくさんある。」とのことでした。

 確かに、与野党対決型の立法、政策論争では、決算の仕組みをどう変えるかといった議論は後回しになりがちです。
 一票の格差や定数削減ばかりが話題になりますが、参議院の在り方そのものについて、腰を据えて議論しなければなりません。