世話人を務めさせていただいている自民党の「知的財産戦略調査会 知財紛争処理システム検討会」に、私は企業経営者の視点で関わらせていただいております。
会長の保岡先生、座長の三宅先生をはじめ関係者のご尽力により、このたび「提言」がまとめられましたので、そのうちのいくつかについて簡単に紹介させていただきます。

○ 特許侵害者への損害賠償額を適切なものとする
30年間、企業を経営してきて強く感じていたのは「日本はマネしたもの勝ち」ということです。マネをされた側からすれば、すべての損害を立証することはとても難しく、例え裁判で勝訴しても、権利侵害者の手元には利益が残るのが現状です。これでは不公平であり、特許侵害の予防にはなり得ません。
故意に侵害した場合には、権利侵害者の利益を不当に残さないよう、十分な侵害抑止効果が生まれるような法整備を求めます。

○ 弁護士費用を損害賠償として認める
○ 中小企業のための助成策を導入する
特に中小企業にとって、特許侵害訴訟はハードルが高いものです。社内に特許や知財に関する専門家がいることはまずありません。当然、弁護士に頼るしかありませんが、弁護士を使って例え勝訴したとしても、特許侵害訴訟において弁護士費用は損害賠償として認められません。
また、訴訟費用はとても高額です。訴訟提起のための手数料(印紙代)も、訴額によっては数百万円から一千万円を超えてしまい、これだけでも中小企業にはとても負担できません。「裁判を起こすのにこんなにも高い手数料を支払う国は日本だけだ」との指摘もあります。
 企業が例え勝訴しても、損害賠償額が訴訟費用よりも低くて大きな持ち出しとなったといった事態を少しでも防ぐために、弁護士費用を損害賠償として認めると共に、中小企業・小規模事業者に対しては訴訟提起のための手数料(印紙代)を減免するといった助成策の導入が求められます。

 私からお願いしたのは、中小企業や小規模事業者に対する知財経営や知財訴訟に関する啓発活動を、商工会や商工会議所を巻き込んで取り組んでほしい、ということです。中小企業においても、これからは知的財産を活用して企業価値を高めていく必要があります。中小企業を支援する組織も、知的財産に対する意識とスキルを高めていかなければなりません。