朝出勤するときなど、前向きな音楽を聴きたい時がある。一方寝る前には静かな音楽を聴きたくなる。10代の頃はこの二つが自分の中で別なものとして認識されていた。東京に出てきて真剣に音楽に向き合うようになって、どちらも同様に音楽だと気づいたことは、文字にするととても当たり前のことだけど、自分の中ではとても大きな認識の変化だった。それまでファッションやカルチャーとセットでしか音楽を聴いていなかったと気づいた。そのきっかけとなったうちのひとつがシガーロス。

これも売れる一枚前のアルバムで、全体的には地味な印象のアルバム。ヒーリングミュージックのような心地よさだが、決してポップなアルバムではない。ビート感は皆無。そして歌詞は全曲通してワンセンセンテンスしかない(というふうにしか聴こえない)。また、起伏や変化の乏しいメロディラインから何かの感情を呼び起こすのはそれ相応に音楽経験を積んでいないと難しいように思う。

それでも多くの人に薦めたいアルバムだ。ここに描かれている風景は、繊細な人間にとって世の中がどれほど生きづらいところでも、ポジティブにふるまうことが一番美しいのだと感じさせてくれる。ある意味、ジャケットのアートワークのままの内容のアルバム。