ネットを利用した『ヘイト攻撃』を考える10・3シンポジウム…報告 | Wattan Net Life

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10月3日(水)、参議院議員会館にて、『ネットを利用した『ヘイト攻撃』を考える10・3シンポジウム』が全日本建設運輸連帯労働組合、全日本港湾労動組合、全国コミュニティユニオン連合会らの呼びかけにより開催された。


 ※以下、呼びかけ文である。


全日建建設運輸連帯関西生コン支部に対する不当弾圧が熾烈を極めている。この弾圧において特筆すべきことは、人種差別、ネオナチ的主張を繰り返す差別排外主義者が警察に同伴し、さらに正当な組合活動に対する確信犯的な誹謗中傷・攻撃をネット上で繰り返していることである。
こうした事態は、関連性を持ちながら広範に拡がっており、全国ユニオンの青林堂闘争においては、労働三件をあからさまに否定する言説をネットや出版物で展開し、代理人弁護士に対して1000件を超す大量の懲戒請求をネットで拡散し、組織的に攻撃を加えている。
労働運動以外でも、辺野古基地の運動に参加する人々へのネット上での嫌がらせ、少数民族や生活保護者や障がい者や性被害者に対するSNS上での誹謗中傷などである。これらは、単独の跳ね上がりではなく、こうした言説を実質的に奨励しているといえる安倍政権の威力を背景にしたネット右翼や差別排外主義者によるリベラル・左派運動体や社会的少数者や当事者に対するネットを悪用した「ヘイト攻撃」といえる。こういった事態はもはや看過できない段階に入っている。
しかし労働運動サイドは、ネットに関する取り組みを重視していない現状がある。こうした相手側の組織的背景や連帯運動を軽視している面もある。
こうした現状を踏まえ、ネット上での問題や被害実態を共有し、これに対抗するSNSを活用した運動構築などを目指す連続シンポジウムを開催する。


呼びかけ人=菊池進(全日建)、松本耕三(全港湾)、鈴木剛(全国ユニオン)、嶋崎量(神奈川総合法律事務所)

 


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シンポジウムではテーマスピーカーとして、弁護士や労働組合からの発言の他、和田悠(立教大準教授)、香山リカ(精神科医)、三宅雪子(元衆議院議員)、安田浩一(ジャーナリスト)らの発言を抜粋して紹介する。

和田氏は、「池袋では最近、ヘイトデモが多発しているが大学に通う学生の中には東アジア圏からの留学生が案して大学に通うことができない実態がある」ことを危惧されていた。また、自身が板橋区で無党派の市民運動団体にかかわる中で感じたこととして、例えば「脱原発で一点共闘(ワンイシュー)の市民運動でやっていたのですが、やっていくなかで参加者たちから地域のさまざまな問題(マルチイシュー)があがってくる。そうなると、それまで市民と政党が一点共闘の約束でやってきたかたちが変わってきて、政党としてかかわりづらくなってくる。しかし市民運動では地域のあらゆる問題の関心が参加者と共につながっているのです。このような点から見て市民運動が全体性を獲得しなければならない。敵の側は、あらゆる問題でつながりながら攻撃してくる状況で、それに対抗する私たちが一点共闘など自分の課題だけで留まっていたのでは、他の市民運動や社会運動と関わって連携を広げていくという点ではまだまだ弱いなあと思う」と述べていた。

香山氏から、「デマを垂れ流す『ヘイト攻撃』に対抗するには、それをさらに上回るデマを流す…というのは妥当な手段ではなくて、例えばネット上の動画サイトで何十万件も配信されている『ヘイト動画』に対しては削除要請を逐次入れて成果を上げてはいるものの、それらを反証する正しい情報を伝える動画の配信は少ないのが現状である」との指摘を受けた。
つまり、情報戦とは「受身」ではなく「先制」であるべきということなのだろうか。

三宅氏は、自衛隊のなかに浸透しつつある調査結果をお話され、隊員たちが排外主義・右翼思想などの影響を受けることに危機感をつのらせる発言をされていた。

安田氏は、さまざまな現場で被害をもたらしている差別・排外主義の社会的潮流について日本社会が無関心であったことに強く指摘されていた。それは、当初の「嫌韓・反中国デモ」などを牽引してきた右派「市民運動」の内包する抗議対象の本質を見誤っていたことにより、社会的少数者や民族差別の策動を阻止する機会を逸してしまったとのこと。さらに、そういった差別の問題を一部の運動のなかでは「在日問題」とか「沖縄問題」などと言って問題の本質を見失った言説で語ってしまう。そうではなくて、差別というのは日本社会の問題、私たちの問題としてきちっと向き合っていくことが大切であると述べていた。

また、沖縄についても、今さまざまなデマが飛び交っているが、2013年の1月、「オスプレイ配備反対」で当時、那覇市長だった翁長さんや沖縄代表者たちが東京の銀座で抗議デモを行なったとき、沿道で大勢の右翼たちから罵声を浴びせられたことで後に翁長さんは県知事になってから「辺野古基地建設の差し止めの決断に舵を切った」と記事に書いたけど、あれは後から翁長さんが述べていたことによると、「右翼から罵声を浴びせられたことには腹が立ったけれど、あの日、銀座を歩いていた一般の人々が沖縄県民が一生懸命訴えてもまったく反応を示さず通り過ぎていく様子を見て本当に腹が立った」という。たしかに、米軍基地問題について東京と沖縄の一般人の認識ひとつとってもこれほど象徴的な違いを目の当たりにして、「日本は駄目なんだ」と思ったのだった。
「そういった無関心を放置していた日本社会に翁長さんは絶望し、そして舵を切った。沖縄の自分たちの意思を主張を必ず実現させると思って、そこで腹を決めた。そういうことを振り返りながら改めて思うわけです。あの日、なぜ私たちは「同じ日本人」と言うならきちんと守らなかったのか。右翼はしなかった。保守はしなかった。リベラルも見て見ぬふりをした私たちの社会を。だからこそ私たちは差別の問題をよく観なければならない。労働運動だけではなくて、弁護士だけではなくて、ジャーナリストだけでもなくて、私たちの社会に向けられたものという認識が必要ではないかと思っています」。
「差別と偏見は何を壊すのか。当事者の心の傷を増やす。当事者を追い込むということも大事だが、同時にこの社会に住んでいる人々を壊していくのだと、そして私たちの社会をも壊していくのだと。私たちが『ヘイト攻撃』差別を容認した時点でこの社会の分裂と亀裂がどんどん広がっていくのだということ。私たちはこれ以上社会を壊すことに手を貸さない。そうした思いを皆さんとこれからも共有していきたいと思っています」と締め括ったのだった。