第147回芥川賞受賞作『冥土めぐり』鹿島田真希
一言でいうと:
やたら観念的で、字幕の訳がアバウトすぎて意味がわからない、とても退屈なフランス映画みたいな。
女の愚痴ですな、これは。小説というよりも。
脳に電極を入れている夫・太一と、熱海らしき保養地への一泊二日の旅を、自分の母と弟への愚痴で綴ったお話。
祖父が築いた財産を食いつぶした母親と弟と、主人公・奈津子との変な関係(寄生関係?)を、主人公の視線でぐちゃぐちゃ書いているのには閉口した。
過去の贅沢な暮らし向きが懐かしいんだな、結局、主人公も。
読み進めるのが苦痛だったが、せっかく880円出して買った文藝春秋9月特別号だから、とにかく最後まで読んだ。
が、読後感はサイテー。
何の感動もない。
気分悪い。
読まない方がよかったかも。
また、クビを傾げる表現が何カ所かあった。
2月の浜辺で濡れるのもかまわず座るか? 寒ぅー!
へそを出して居眠りするか? 寒ぅー!
弟がキャバクラに姉を連れて行くか?
さらに、キャバ嬢の前で姉を侮辱するか?
あり得んでしょ、そういうシチュエーションは。
その他、「?」と思う文章がいくつかあった。
選考委員の選評が、おおむねべた褒めなのが、さらに「?」。
村上龍がただ一人「ノー」だったが、その理由は「テイストとモチーフに対する違和感」と、言葉を濁している。
もっとはっきり言えばいいのに。