チャーリーとチョコレート工場

公開を待ち望んだ映画を観て来た。
「チャーリーとチョコレート工場」ーイギリスの人気児童文学「チョコレート工場の秘密」を、盟友ティム・バートン&ジョニー・デップのコンビが映像化した話題の映画である。

これまでにも「シザーハンズ」「スリーピー・ホロウ」とあったけれど、彼らのつくり出すファンタジーの世界が私はとても好き。ピュアでどこまでもロマンティックで。現実とは違う、どこか別の世界へ連れてゆかれるような気分になる。まるで、大切にしているおもちゃ箱のなかに自分がすっぽり入り込む感じ。
今回は公開まで時間があったこともあり、原作やら30年前の映画 やら(今回のものはそのリメイクに当たる)を眺めながら、随分と想像をたくましくしてしまった。(あらすじは「夢のチョコレート工場」 の記事をご参照下さい)

さて、実際に箱を開けての感想は、それでもやっぱり”期待を裏切らないおもしろさ”だった。

原作の持ち味である皮肉たっぷりのブラックユーモア(ウンパ・ルンパの歌と踊りで表現される)も、教訓や説教臭さよりむしろ可笑しさに転化され、そのパワーで物語を前へ前へと転がしてゆく。これぞ子どものピュアな視点を忘れないティム・バートン流、そんな気がして嬉しくなった。

主演のジョニー・デップもしかり。前髪を切り揃えたおかっぱ頭や、まるで陶器のように白くつややかに塗られた顔、完璧な歯並びなど、原作とは容貌もまったく違うジョニー・ウォンカをつくり上げながら、原作を読んだ観客にも違和感を感じさせない熱演ぶり。子どものように無邪気に瞳を輝かせながら、実に楽しげに変わり者の天才ショコラティエ、ウォンカ氏を演じていて、観ているこちらも思わずにんまり。

できる限りCGに頼らないでと、監督がギリギリまでこだわってつくったらしいチョコレート工場のなかみもまたみどころのひとつ。ビジュアリストの本領発揮とばかり、心躍るようなポップな色づかいはもちろんたのしいし、手づくりならではのぬくもりと安定感が映画をあたたかなものにしている。

気がつけば慌ただしい日常のことなどすっかり忘れ、やはり今回もまたどこか別の世界へ連れてゆかれたような気分。

あえて言うならば、原作にはないウォンカ氏と歯科医の父親との確執や和解の場面が必要だったかどうか…。これには賛否両論あるのでは。監督はウォンカ氏が偏屈な変わり者になった理由づけが必要と考えたらしいけれど、私はなくてもよかったと思う。ファンタジーに説明は必要ない。それがなくても、大人にも子どもにも理屈抜きにたのしめる映画だったと思うのだ。

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「チャーリーとチョコレート工場」

【作品データ】
2005年/アメリカ/115分
staff*
監督:ティム・バートン
脚本:ジョン・オーガスト
制作総指揮:パトリック・マコーミック/フェリシティー・ダール/マイケル・シーゲル/グレイアム・バーク/ブルース・バーマン
撮影:フィリップ・ルースロ,A.F.C/A.C.E
美術:アレックス・マグダウェル
音楽:ダニー・エルフマン
cast*
ジョニー・デップ/フレディー・ハイモア/ヘレナ・ボナム=カーター/ノア・テイラー/ディープ・ロイ/クリストファー・リー 他

【原作】
R・ダール, Q・ブレイク, 柳瀬 尚紀
チョコレート工場の秘密

【ロアルド・ダール公式サイト】
http://www.roalddahl.com/

【作品公式サイト(日本)】
http://charlie-chocolate.warnerbros.jp/

【作品公式サイト(アメリカ)】
http://chocolatefactorymovie.warnerbros.com/

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