第13回目、食べて見て座談会 | オーストラリアで夢を叶える女性起業家の話

オーストラリアで夢を叶える女性起業家の話

2歳児の母、マーケティング会社経営10年目、オーストラリア国立工科大学(UTS)大学院で移民法を学ぶ1年目の三足の草鞋を履いています。
2024年「修練の年」

日々感じることをゆるやかに更新しています。

オーストラリアで日本食に携わる料理人の知識や技術の向上のために

日本食普及親善大使の出倉秀男氏と共同で主宰している勉強会は13回目を迎えました。

 

食べて見て座談会は、ご自身の人生で培ってこられた料理に関する知識や情報を惜しみなく共有されるゲストシェフの方々の利他精神で成り立っています。

ご多用な毎日の中の合間を縫ってイベントの内容を決められ、そのために準備され、そして当日は早くから仕込みをされた後にプレゼンテーションを行われます。私は、このようなご自身の時間をオーストラリアの日本食基準の向上のために惜しみなく使われる料理人の方々の器に毎回感銘を受け、心から敬意を表したいと思っています。

 

今回第13回目は、KAME HOUSEから松谷シェフがご登壇されました。

北海道の函館市の中でも谷地頭町という明治4年から寿司屋があったとされる町で、寿司屋のご子息としてお生まれになりました。高等専門学校では機械工学科を履修される理系で、学生会長やサッカー部キャプテンも務められていたチームを率いる力を養われた学生生活の後は、北海道の名門すすきの高級寿司屋で6年間修行され、家業の寿司屋で3年間板前として勤められた後にオーストラリアに渡豪されたのは2005年ということでした。そこから約20年の年月をかけて老舗東レストラン、今は亡き満員御礼の華樹林、そして一番鶏で独立と華々しい経歴とその過程で磨き上げられた独特な技術は、寿司職人としてだけではなくラーメン職人としてもご活躍されていらっしゃいます。

コロナ禍を機に一番鶏を閉店し、ご息女と共に次世代ちらし寿司の開発と共に地元メディアに取り上げられるなど、ご活躍の場を広げられます。CHOJI OMAKASEでは和牛と魚のOMAKASEで一世を風靡し、KAME HOUSEは開店後すぐにワンハットを取得されるなど今後も益々のご活躍が期待される松谷シェフは、今回の料理人のための勉強会では寿司をテーマに選ばれ、寿司職人として舎利飯について、寿司の握り方について披露されました。

2024年の始まりということで、先日の包丁式で行ったまな板びらきの儀を行っていただきました。

イベントでも出倉先生の介添としてお手伝いいただいた河野巧氏が、先導して塩を使ってまな板を清められました。

 

舎利飯は、寿司で使われる酢飯です。

オーストラリアでは、日本食輸入、卸会社のおかげで美味しい日本米が食べられます。

ただ赤道を通過する輸送過程においてお米の劣化は避けられない状態で、日本でいう古米のような状態になって新米が入ってくるのだそうです。しかしながら、寿司においては酢が入りやすいという点では少々劣化した古米が最適なようです。

その中でも、Jun Pacific社が輸入されている笑みの絆という寿司専用に作られたお米を松谷氏の寿司には使われるということでご紹介されました。炊飯器で炊いた場合と、羽釜で炊いた場合の違いもご説明され、実際に酢飯を目の前で作って食べ比べることができるのは他にはない経験だったと思います。

Jun Pacific社から森マネージャーがご出席され、日本米は昔に比べて精米技術が格段と上がっているにも関わらず、昔ながらの洗米方法では米が割れてしまう可能性があるというご意見も実際のお米を例に例えてお話ししてくださいました。

松谷氏からは、日本で現在5つ星マイスターとして活躍されている方が開発された極み炊飯という、現在の日本において最も良いとされているお米の洗米方法、炊飯方法をわかりやすく伝授されました。中でも、お米が洗米されている過程における吸水率を抑えるための方法はとても興味深いものでした。

 

日本米の他にも、寿司には欠かせない、赤酢(美濃三年酢)、有機丸大豆と小麦を材料にして木の桶に付着した菌で発酵されている弓削田醤油、揮発性の高い山葵を液体窒素の中ですりおろして(超低音すりおろし製法)パッケージしたものを冷凍して輸入している金印の本わさび、超高級店で好まれて使用されている香り高い有明海苔などなど、Jun Pacific社しか取り扱わない希少な商品をご協賛いただき出席者の方々になぜ松谷氏がそれらを選ばれているのかを説明していただきました。

毎回満員御礼の座談会ですが、今回もまた多くのシェフの方々にご参加いただきました。

日本で料理人として生まれ修行されてきた松谷氏のような料理人だけではなく、オーストラリアに来てはじめて料理の世界に入ったという方も、日本国出身ではない方もいらっしゃいます。第一回目から継続してご参加されている方は本当に勉強意欲が高く、ご参加される皆さんの共通点は、オーストラリアで日本食に携わっていること、そして謙虚に学び続ける姿勢があるということです。そんな皆さんがそれぞれの視点で質問し合いながら共に学ぶ姿は、今後のオーストラリアにおける日本食市場を支えていかれるのだと思います。

 

このような貴重な勉強会を出倉先生と共に、微力ながら主宰させていただくこともまた感謝です。

ご登壇いただいた松谷シェフ、お手伝いいただいた巧シェフ、ありがとうございました!