2016年4月28日のリブログ。

--

予備校に通い出したAくんとの勉強会のことは何度もブログに書いてきたが、高校3年間に日本史をまったく学ばなかったことが、日本の伝統文化を知らない若者を増加させているのではないか。また、高校日本史の不履修の影響はそれだけに止まらず、国語(古文だけでなく現代文も)の理解にも支障をきたしているのではないかと、ずっと考えてきた。

 

持論とも言えない感情論と揶揄されるだろうが、考えの根幹のみをまとめてみた。

 

--ここから

ここ数年、複数の高校に在学する生徒たちを教えていて、学校も教師も異なるにもかかわらず、生徒が学ぶ授業に、共通した問題があることに気づいた。すなわち・・・・・・

▲ 教科書をほとんど使わず、市販の問題集をコピーしたものを解かせ、授業時間の最後の10分程度で教師が正解を読み上げて終了するという授業で生徒は学んでいる。

▲ 生徒は、古文そのものを読む機会のないまま、動詞や助動詞などの活用形(語形変化)の棒暗記のみを強いられている。

▲ 現在の高校では日本史が必修ではなく選択科目になっているため、日本史を学ばない学生は、物語が書かれた背景となる文化や歴史的事実を知らない。これは古文だけにとどまらず、明治・大正・昭和の近現代の文学史をまったく知らない学生の増加にも影響していると思われる。

--ここまで

 

先日、Aくんとの「小林秀雄『考えるヒント』を読む会」で「忠臣蔵Ⅰ」を読んだ。

Aくんは「忠臣蔵」を読めなかったし赤穂浪士の討ち入りという歴史的事実も知らなかった。このことは先日のブログでも書いたのだが、Aくんの名誉のために言っておきたい。彼は頭脳明晰である。数学は数Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲを完璧にマスターしている。現在は国立大学の受験を目指し、理系から文系に転向した。

そんな彼との次の会話を聞いてほしい。

--ここから

(素人学者)「忠臣蔵」を辞書で確認しようか。

(Aくん)「ちゅうしんぐら」ですね。

 

ちゅうしんぐら【忠臣蔵】 赤穂浪士四七人が、亡君の仇討ちをしたことを主題にして作られた浄瑠璃・歌舞伎脚本・講談などの総称。また、特に「仮名手本忠臣蔵」の通称。

Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988

 

(Aくん)ちゅうしんぐら・・・・・・えーっと・・・・・・。(沈黙)

(素人学者)読めない字があるのかい?

(Aくん)「アカホ」、で、いいのですかね?

(素人学者)「赤穂」と書いて「あこう」と読むんだよ。

--ここまで

 

この日は「忠臣蔵Ⅰ」の読書会の2回目だった。1回目には、元禄時代、討ち入り等を近松門左衛門に成り代わって(笑)、身振り手振りでAくんに説明した私だったが、Aくんは、私が説明した「赤穂浪士」の「あこう」の漢字を知らなかったことが判明したのである。

私が幻滅したのはAくんではなく、高校の教育課程の現状に、であった。

 

私は2回目の読書会で、Aくんに1冊の本を紹介した。

 

 

何度かブログで紹介したことがあったかもしれないが、実業之日本社《じっぴコンパクト新書》シリーズの中の1冊である。

高校3年間で日本史を履修してこなかったAくん、しかも、大学受験科目に日本史を選択しないというAくんにとっては十分すぎる水準の書籍であるし、往復3時間をかけて予備校通いをするAくんにとっては電車の中で読むのに相応しい書籍である。

「1冊プレゼントしてもよいが、自分で買ったほうが読む気になると思うよ。」

「『考えるヒント』を読むためには、字面じづらだけ読んでも理解できない。文化や歴史を知らないとだめだから。」

と言って、Aくんには苦手としている近代文学のあらすじが読める次の本をプレゼントした。

 

 

ちなみに、《じっぴコンパクト新書》には次のような本もある。

 

 

いっきに! 同時に! 化学もわかる物理 じっぴコンパクト新書 164
2013(平成25)年11月28日 初版第1刷発行
著者 京極一樹(きょうごく・かずき)
画 手塚治虫
発行者 村山秀夫
発行所 実業之日本社
定価:本体762円+税
<表紙>
科学の世界を化学&物理の
両面から見るとよ~くわかることだらけ!
物理の運動も科学の反応も、
実は同じような仕組みで発生して反応している!
理系科目に10倍強くなる同時理解術
<裏表紙>
物理と化学は、まったく異なる分野の学問ということもできますが、それらの間には数々の共通点があります。物理の運動も化学の反応も、実は同じようなしくみで発生し、反応しているのです。
またどちらの学問も「物質」を対象としています。物理学的観点、科学的観点から「モノ」を考えることで、それぞれの学問の本質的な部分がはっきりと見えてくるでしょう。
理系科目として、いずれか、もしくは両方の科目を選択している学生のみなさんにも読んでいただきたい一冊です。
2016(平成28)年4月25日 購入

 

 

Aくんから『世界史もわかる日本史』を買って読み始めた、という連絡があった。

検討を祈る。