私が小学4年(1966)のとき大叔父(祖父の弟)が脳溢血で亡くなった。朝の6時10分だ。なぜ時刻まで憶えているかと言うと、大叔父は祖父と同じく国鉄(現JR)に勤務していたので、出勤前に頻繁に我が家に訪れていた優しいおじさんだった。そのおじさん死去の電話がかかった時刻が怖くて、目覚めていても布団から出られなかったからだ。

4月11日(木)に私と名字は同じだが知らない人(K県在住)から我が家の家族一人ひとりにA4判の封書が届いた。内容を要約すると

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大叔父が亡くなったあと、親族が集まって遺産分与の話し合いをした。大叔父の跡を取っている息子さん(封書を送った人)の手紙によれば、すべて遺産は分与したはずだが、大叔父の住んでいた住居の登記の名義が大叔父のままになっていた。

息子さんの名義に変更するには、現在生存している親族12人すべての人から、息子さんの名義に変更する承諾をもらわないといけない。

ついては意思確認書を同封の返信封筒で送ってほしい。賛同してくれれば、来月以降に正式な書類を郵送するので印鑑証明書等書類を送ってほしい。印鑑証明の手続き費用はお送りする。

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である。関係する系図も同封されており、私や私の家族も記されていた。すでに亡くなっているが顔と名前がよくわかる親族も記されていて、とても懐かしかった。驚いたのは、私の祖父が曽祖父の長男とばかり思っていたのが、系図によれば次男だったことだ。

57年前に亡くなった大叔父が生存者に不動産の名義変更という影響をもたらしたという事実に、人は亡くなったからといって世間から忘れ去られるのではなく、本当に忘れ去られるのは、世の中から関わりが一切なくなり、親族や周辺の人達の記憶から完全に忘れ去られたときだと思った。

57年前に亡くなった大叔父は今も「生きて」いた。