現在、二人の高校1年生に数学を教えている。4月から5月の連休明けまでは、中学数学の復習から入って、ほんの少しだけ高校数学の雰囲気を味わった数学Ⅰだったので、二人とも順風満帆という状態だった。ところが、数学Aに切り替わったとたんに、「ギブアップ」の声を発するようになった。

 

 40数年前、私が高校生だったときには、3年間の数学教科書は「数Ⅰ」「数ⅡB」「数Ⅲ」だった。それでも、現在の数学Aの内容は当時の数学Ⅰで習っていた。その証拠に「順列・組合せ」の解法を私はよく知っている。教育課程の変遷によって教科書名と内容分配が変わったためと推測する。

 

5月下旬になり、生徒が「高校数学は、やっぱり難しいなぁ・・・・・・」と思うのは、次のような「順列」の問題に出合ったときである。

 

男子3人と女子5人が1列に並ぶとき、

両端の少なくとも1人は男子である

ような並び方は何通りあるか。

 

似たような教科書の例題・練習問題は何とか解けたのだが、この問題に悩むのだ。

 

生徒たちは、教科書の例題の解答例に倣ならって図を描いてみる。

 

[ 男 ] [ のこりの6人 ]  [ 男 ]

[ 男 ] [ のこりの6人 ]  [ 女 ]

[ 女 ] [ のこりの6人 ]  [ 男 ]

 

生徒はここまで描いて、「わからない」となる。

「少なくとも1人は男」を図に表すと、たしかに上記のとおりになるのだが、計算式がわからないのだ。

 

高校数学では「条件の言い換え」(論理の整理)が、中学数学よりも数段難しい。

 

上の問題文は、次のように言い換えるとスッキリわかる。

 

両端の少なくとも1人は男子=(8人の自由な並び方)-(両端が女子である並び方)

 

8人の自由な並び方 = 8! = 8×7×6×5×4×3×2×1 = 40320通り

 

両端が女子である選び方 = 5人の女子から2人選ぶ = 5P = 5×4 = 20通り

20通りのどの場合に対しても、間に並ぶ6人の並び方 = 6! = 720通り

よって、両端が女子である並び方 =  P×6! = 14400通り

 

以上から、

「両端の少なくとも1人は男子」の並び方 = 40320 - 14400 = 25920通り

 

 

生徒は言う。

「どうすれば、(条件の言い換え)を思いつくのですか?」と。

私は答える。

「高校数学は難しいと言ったって、〔 順列 〕問題解法の基本パターンは無限にあるわけじゃないよ。いくつかの基本パターンを頭に浸み込ませるんだよ。そのためには、教科書の例題、練習問題、章末問題のすべてを繰り返し解くこと。そして、問題を読んだ瞬間、解法が思いつくまで、繰り返し練習すること。これに尽きるね。」

 

今の生徒は、とことん練習する、という習慣がない、と、思っている。これは、実際に教えている数人の生徒だけの話ではなく、ごくごく一握りの特例を除いた世間一般の生徒像だと思っている。

「やればできるのに、やらないなぁ~」というのが私の気持ちである。